RED & BLACK

観劇日記

【感想】『キャッツ』2019年映画版

悪名高い『キャッツ』映画版がアマゾンプライムで無料になっていたので、見た。

今年は、ロンドン版の配信も見たし、劇団四季で舞台版も見たので、個人的にはキャッツ・イヤーだった。その集大成(?)が映画版でいいのか?という気はするが・・・

 

ネットで散々な悪評が流れている本作だが、映画として良い出来になっているかは別として、『キャッツ』2次創作としては面白いところもあった。

 

 

感想

舞台版から変更されていたのは、以下の点。

・舞台版は明確な主人公がいないが、映画版はヴィクトリアが主人公になっている。

・ヴィクトリアのソロ曲"Beautiful Ghost"の追加。

・台詞がかなり追加されている。それに伴い、人間(猫間)関係の描写が増えている。(ヴィクトリアとミストフェリーズ、ヴィクトリアとグリザベラ、ミストフェリーズとガス などなど)

・猫たちの性格・設定の変更。

・舞台版ではマキャヴィティが悪事をはたらく意図は明確ではなかったが、映画版では目的がはっきり描かれている。

・オールド・デュトロノミーがオス猫からメス猫になっている。

・グロールタイガーが、アスパラガスが演じる架空の猫ではなく、実在の一匹の猫になっている。

・ランパスキャットのナンバーはカット。

・猫の表現方法が、メイクからCGになっている。

 

ストーリーについて 

まず、ヴィクトリアを主人公に設定し、ジェリクルキャッツの仲間に入っていく過程を描くストーリーにすることで、作品の設定や世界観を分かりやすくしようという意図が感じられた。実際、ジェリクルボールとは何ぞやとか、世界観の説明がちょっと台詞で追加されていた。

また、ジェリクルボールをマキャビティが邪魔するというストーリーや、ヴィクトリアとミストフェリーズのロマンスを創作することで、舞台版よりは分かりやすくなっていた。舞台版を知っている人間からすると「話がある!」という感じだった。しかし、映画だけ見た人からするとやはりまだ「話がない」という状態だったようだ・・・エンドロール入れても1時間50分なんだし、台詞でもっと説明した方が良かったと思う。

しかし、映画版で追加されたストーリーはお約束展開すぎて、正直つまんないのは否めない。ストーリーの軸であるヴィクトリアとミスとフェリーズのロマンスは何の変哲もないし、ヴィクトリアをミストフェリーズが助けたり、ミストフェリーズをヴィクトリアが励ましたり、あるある展開すぎて、陳腐な印象を受けてしまう。

 

また、ヴィクトリアに捨て猫という属性を追加したことで、社会から「捨てられた」存在であるグリザベラとの共通点が生まれ、さらにグリザベラのナンバー"Memory"に対応するヴィクトリアのナンバー"Beautiful Ghost"が追加されることで、ヴィクトリアとグリザベラの対応関係が形成されている。(余談だが、ヴィクトリア役のフランチェスカ・ヘイワードよりも、エンドロールのテイラー・スウィフトの方が明らかに歌がうまくて、かわいそう)。ヴィクトリアとグリザベラは、他者から受容されることを望んでいるという共通点があり、共感を用いてヴィクトリアは能動的にグリザベラをコミュニティに招き入れる。

さらに、オールドデュトロノミーをメス猫に変更することで、ヴィクトリア(若年)・グリザベラ(中年)・オールドデュトロノミー(老年)という3世代の女が連帯する物語になっていた。まあ、連帯した結果、なぜグリザベラが天上に行くのかはよく分かんないけど。グリザベラも一緒に楽しくジェリクルキャッツとして生きていけばいいじゃない。

あと、グリザベラが排斥される理由は、娼婦だからではなく、マキャビティに協力したからというふうに変わっていた。マキャビティに協力してる猫は他にも何匹かいるのに、なぜグリザベラだけ・・・?娼婦でしかも醜くなったゆえにコミュニティの男からも女からも嘲笑されるというのがリアルで良かったと思うんだけど。そのあたりを無難にしようと変更したのは良くなかったと思う。全体的に性愛要素は削除されていて、その代わりにヴィクトリアとミストフェリーズの青春的恋愛要素が追加されているので、対象年齢低めになっている印象。

 

猫たちの性格は、だいたい皆カッコよさ減でお間抜け的に変更されていた。親しみやすくしようとした結果なんだろうけど、笑って良いのか微妙なセンスのギャグも多く、あんまり良い効果は感じられなかった。ラムタムタガーをセクシーイケメンモテモテ猫からイタいカッコつけ野郎に変えたのはファンが怒りそう。ミストフェリーズもドジっこヒロインすぎるし、マキャビティなんてバイキンマンなのか?

グロールタイガーをガスと別の猫にする改変は必要ないと思ったけど、ガス役のイアン・マッケランが楽しそうだったから別にいいかという感じ。ボンバルリーナは大分カッコよく改変されてて、この映画はテイラー・スウィフトのPVなのではという感じだった。

 

ミストフェリーズとガスの友情のくだりは良かった。ミストフェリーズとラムタムタガーの友情が削除されたのは寂しいけど。いや、いいよ別に。"Rum Tum Tugger is a terrible bore"をミストフェリーズが歌ってくれたからいいよ。

 

CGについて

さんざんに言われているCGの猫人間ですが、たしかに気持ち悪い。舞台版もわりと気持ち悪いけど。

毛皮が薄すぎというか体毛が短すぎ。人間の大きさと毛の長さの比率でCG作っていると思う。人間を猫の大きさに縮小してから、毛を生やさないと・・・毛が長めの猫(ガス、オールドデュトロノミー、グリザベラ)や模様がある猫(ミストフェリーズ、マンゴジェリー&ランペルティーザ)は結構かわいかったので、気持ち悪さの原因はだいたい短すぎる毛のせいだと思う。

あと、猫の大きさが明らかに小さすぎる部分がいくつかあってかなり気になった。線路の上を歩くところとか、体長10cmくらいに見えた。

画面が結構暗いので、服を着てない猫の見分けがつきづらい。皆に服着せればよかったのに。

 

せっかくCGなんだから、アニメ調の猫にすれば良かったのにと思う。しかし、そうすると生身の人間のダンスの魅力はかなり失われてしまう。『キャッツ』からダンスの要素を減らすことはできないという判断の結果、中途半端な猫人間が生まれてしまったのだろう。

ダンスの要素を生かすに当たって、CGで動きをつけているところが雑音になってしまっていたのは残念だった。ところどころ、長距離をジャンプする部分などにCGの動きが入っているので、生身のダンスを見たときの感動が薄くなってしまっていた。

 

ネズミ人間とゴキブリ人間は許さない。事前知識ありで家で見てて本当によかった。ネズミ人間のネタ、後々まで引っ張るなよ!気持ち悪いよ!

 

See also:

誰も文句を言わない(言えない)方の映画版。

iceisland.hatenablog.com

劇団四季の舞台版。

iceisland.hatenablog.com

車なしの旅 長崎かくれキリシタンゆかりの地めぐり

世間の人々が皆Go Toトラベルを使っていてうらやましくなったので、長崎に旅行に行ってきた。(注:2020年10月)

遠藤周作の『沈黙』を読みんで調べているうちにかくれキリシタンの歴史や文化面白いとなり、見たいところが無限に増えてしまった。しかし、かくれキリシタンの集落はあまりアクセスが良くないところが多いので、車が運転できない人間としては厳しい旅程になってしまった。後世の人の参考になるように記録しておこうと思う。

 

 

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2021年に見たいミュージカルまとめ

年の瀬になってきたが、来年見たいミュージカルがたくさんありすぎて収集がつかなくなってきたので、自分のためにも整理。情報が入ってくるにつれて随時更新しています。

筆者は首都圏に住んでいるので東京公演の情報だけです。あと、行きたさは完全に好みなのでオススメ度ではないです。

 

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Glideで作った自分用レシピブックが便利だった

自炊していると、献立に悩むことが多い。冷蔵庫に白菜とにんじんがあったから使わなきゃイカンと思い、スマホを取り出し検索窓に「白菜 にんじん レシピ」と打ち込み、出てきたものを作る。そうすると、毎回微妙に違うものができてしまう。

なので、自分のレパートリーの中から、冷蔵庫にある材料を使って作れる料理を調べられるシステムを構築したいと思っていた。以前、Evernoteを使ってレシピを管理しようとしたこともあるのだが、面倒なので一瞬で挫折した。

そういうアプリはないかなと思ったが、意外と見つからない。自分で作ろうにもそんな能力はない。

 

そこで、ネットを探していたら、"Glide"というサービスを見つけた。何と、プログラムを書かずにウェブアプリ(というのか分からないが)が作れるらしい。しかも無料だそうだ。

Googleスプレッドシートを使って、データ入力や検索ができるようだ。私のやりたいことにピッタリだ。早速使ってみた。 

 

*2021/11/28 追記:2021年にGlideの編集画面が変更になったそうだ。以下は変更前のままだが、参考にはなると思うので残しておく。

 

 

完成図

以下ができるように作成した。

スマホから、レシピのデータ(名前、材料、リンク先、写真)を入力・削除・修正ができる

・レシピのデータを材料で検索できる

 

アプリ作成

データシートを作成

まず、Googleにログインし、Googleスプレッドシートにデータシートを作る。今回の場合、材料を調べるのが主目的なので、こんな感じにした。行はこんなに必要なくて、1行でOK。

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Glideにログイン

Glideのサイトにアクセスし、Sign Upボタンから自分のGoogleアカウントでログインする。

 

アプリを作る

Built an appからCreate app from Google spreadsheetを押し、先ほど作ったスプレッドシートを選択。

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もうアプリっぽいのができた!すごい。

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設定

レイアウト

レイアウトを決める。

画面右側のPropertiesからLayoutのところでレイアウトを選ぶことができる。私は検索に使いたいだけなので、Compactにしたが、自分の料理の写真を撮るおしゃれな人だったら、TilesとかCardsにするとよさそう。

Settings(歯車アイコン)のAppearanceのところで、テーマカラーやデザインも選べる。

こんな感じになった。

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データ入力フォームの作成

アプリ側からデータを追加できるようにしたい。

そのためには、Layout画面のADDのAllow users add itemsにチェックを入れる。

そして、データ入力の際は、手入力じゃなく、プルダウンメニューから選択できるようにしたい。やり方が書いてある動画を見つけたので、この通りにやった。

youtu.be

まず、スプレッドシートに新しいタブを作り、選択肢のデータを入力する。

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ADDの右上にある+マークから、Choiceを選択して、設定を行う。写真を取り込むのも、同様に+マークから、Image Pickerを選ぶ。(Imageではないので注意)

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これで入力フォームが作成できた。

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データ編集できるようにする

また、一度入力したデータの編集もできるようにしたい。

アプリ画面に表示されているデータのどれかをクリックすると、Components画面が開く。Editを押し、Allow users to editにチェック。プルダウンなどの設定は先ほどと同じ。

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フィルター機能を追加

デフォルトの状態で、すでにホーム画面に検索窓ができている。しかし、「白菜 にんじん」のように複数の単語を検索することはできなかった(何か方法がある気はするが、分からない)。1個の単語でしか検索できないと不便なので、フィルター機能を使うことにした。

Feasures画面のIn-app filterのところから、フィルターに使いたい列(今回の場合は「材料」)を選択。こうすることで、1個の材料でフィルターした後、別の材料で検索できるようになった。若干不便だが、これでいいことにする。

これで完成!

 

プライバシー設定

プライバシーの設定をする。歯車アイコンのSettingsから、Privacyアイコンをクリック。私は自分だけで使えればいいので、Only I can sign inにする。家族と共用にするのもいいかもしれない。

Shareボタンを押すと、QRコードが表示されるので、スマホで開く。ホーム画面に追加すると、アプリのようにして使うことができる。

 

我ながらけっこう便利なものができて満足。便利な世の中になったものだ。

 

References

以下のページを多いに参照しながら作りました。ありがとうございます。

hikari-sedori.com

最低の演出家|ミュージカル『プロデューサーズ』2020年

ミュージカル『プロデューサーズ』見てきました。

(私の周囲では)いろいろ悪評が立っていて、まあ好きな演目なので行ってきたけど、案の定でしたね・・・

今回ほぼ批判なので、福田雄一氏や周辺の役者さんが好きな方は見ないほうがいいです。

 

2020年12月5日(土)マチネ @シアターオーブ

キャスト

マックス:井上芳雄
レオ:大野拓朗
ウーラ:木下晴香
ロジャー・デ・ブリ:吉野圭吾
カルメン・ギア:木村達成
ホールドミー・タッチミー:春風ひとみ
フランツ・リープキン:佐藤二朗

 

さびしいキャストボード・・・みんな載せたらいいのに。
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あらすじ

落ちぶれたブロードウェイプロデューサーのマックスと、会計士のレオがコンビを組み、失敗間違いなしのミュージカルを制作し、集めた資金を持ち逃げするという計画を立てる。最低のミュージカルを作るため、元ナチ党員のフランツが書いたヒトラー礼賛の脚本、ゲイの演出家のロジャー、英語が話せない女優のウーラを集める。しかし、ヒトラーの風刺と解釈されて大ヒット。フランツはヒトラーが馬鹿にされたと怒って銃乱射事件を起こし、マックスとレオは会計の不正がばれ、結局3人揃って刑務所行き・・・というコメディ。

 

感想

演出が福田雄一氏と決まった時点で私のTLでは結構不安の声が上がっていた。私は福田雄一氏の映画やドラマを見たことはなかったが、全体的にテレビ的な軽いギャグが全体を支配しており、正直合わないと感じた。

上演が決まって映画を見返したときの感想↓

iceisland.hatenablog.com

 

ナチスを親しみのもてる面白いおじさんにするな

佐藤二朗氏が演じる本作のフランツは、内輪向けのギャグ?を長々と入れ込んでくる。このギャグ自体が全く面白くなくて、めちゃくちゃ寒い。そして何より、フランツはそういうキャラじゃない。

フランツ・リープキンというキャラは、元ナチ党員で1960年代になってもヒトラーを信奉しており、伝書鳩を屋上で飼育して南米に亡命したナチ幹部と連絡を取り合い(少なくとも本人はそう信じている)、近所に同じ政治思想のお仲間もいて、初対面の人間に鉤十字の腕章をつけさせてケッタイな誓いの言葉を言わせるし、なぜかヒトラーはイギリス王家の子孫などと荒唐無稽な珍説を信じているというやつだ。どう考えてもヤバイやつ、近づきたくないタイプなのだ。

それなのに、本公演のフランツは、初対面のマックスやレオと話しているのに、今度お前の家にいったら~とか、うちの奥さんが~とか、話の筋に全く関係ないギャグを入れ込んでくる。というか台詞のほとんどがそういうお喋りなのだ(だいたい、元々はフランツの台詞はそんなに多くない)。キャラ崩壊どころじゃない。

フランツを「ヤバイやつ」ではなく、こういう「親しみの持てる面白いおじさん」として描いてしまうのは、キャラ崩壊なだけでなく、かなりまずい。なぜなら、「ヒトラーを礼賛することはありえない、でも風刺であればOK」、というのがこの『プロデューサーズ』物語の前提だからだ。(現実世界の社会規範でもあってほしいが、2020年現代の社会でははなはだ怪しい。)だからこそ、マックスとレオはヒトラー礼賛の脚本で大失敗すると予想したのだし、フランツに鉤十字の腕章をつけられて嫌がっていたのだ。

そもそも、原作映画の監督のメル・ブルックスユダヤ人で、生涯をかけてナチスヒトラーの風刺をやった人だ。もちろん『プロデューサーズ』もその一つで、ナチスを風刺するミュージカルを劇中劇という形で実現させている。さらに、原作映画が発表された1967年には、ナチスを馬鹿馬鹿しく描けば風刺として成立しただろうが、現代ではそれはもはや通用しない時代だ。『帰ってきたヒトラー』で描かれたように、ヒトラーの人間としての部分に親しみを持ち、再評価する動きがあるからだ。

そのため、フランツをマックスやレオと仲良しのおじさんとして描いてしまうことは、「もしや、演出の福田雄一氏は、上に書いたような物語の前提を理解していないのではないか?」という疑いに繋がってくる。劇中で「最低の演出家」として登場するロジャーは、難しいストーリーは嫌、とりあえずショーは楽しければいいという軽薄さ、第3帝国がドイツのことだと知らないほどの教養のなさによって「最低」とされている(単に「オネエ」だから「最低」という解釈もできるが、そうしたくない)。原作の根底にあるナチス風刺のテーマを蔑ろにし、テレビ的な軽い笑いでウケればいいという福田雄一氏はまさに「最低の演出家」なのではないだろうか。

いや、映画版のフランツもコミカルで若干かわいいナチ野郎のおっさんだけど、それはやっぱり異常者、キチガイの範疇での可愛さだからね(何だそれは)。面白い親戚のおじさんみたいに描くのとは距離感が違う。

それとも、フランツをあえて普通のおじさんとして描くことで「悪の凡庸さ」を表現しようとしているんだろうか。いや、違うか・・・

いろいろ書いちゃったけど、伝書鳩の演出は超面白かったよ。フーーーーーー。映画版では鳩の名前がワーグナーのオペラの登場人物になっているという小ネタがあったけど、なくなっちゃったのが残念。

 

あと、gayを「オネエ」と訳してきたことには驚いた。いや、本作に登場するゲイの人たちは確かに(現実世界を生きる多くのゲイの人たちとは異なる)「オネエ」だし、原作がこういうギャグだから仕方ないんだけど・・・原語の"Keep it gay"のgayは同性愛の意と明るく楽しいの意の掛詞になっている。彼ら(彼女ら)はゲイ・カルチャーに誇りを持って芸術の世界で生きていく人たちで、それを表現する言葉として「オネエ」が適しているのかは若干疑問だ。

現代にこういう「オネエ」でギャグをやるということに何の疑問も持ってないらしいところは若干ホラーだった。冒頭の、マックスが「芸を磨き・・・いや、オネエのほうじゃないよ」というギャグとか、わざとポリティカリー・インコレクトなギャグを増やすんじゃあないよ。あと、レオのナンバー"I want to be a producer"のバックダンサーに一人「オネエ」が紛れ込んでいて「君はアウト」っていうシーンとか、カットしてもいいだろ。このあたりのギャグは今でも欧米でやってるのだろうか。

 

一方、ミュージカルネタのギャグとか第4の壁突破系のギャグは結構笑えた。Rentも変なタイトルじゃんとか。ウーラが「何でそんな下手の端っこにいるの?」というギャグがあったのだが、全体的にキャストが下手側にいるシーンが多く、上手側の席だったので見づらかった。もうちょっと真ん中でやってよ。

あと、下ネタが非常に多いのだが、観客の皆さんワハハと笑って見ていたのが結構意外だった。日本のミュージカルファンはエッチなシーンに怒る人が一定割合でいると聞いていたので、下品なのは受けないのかと思っていた。子供と一緒に見に来るような演目じゃないからいいのかな?

 

キャストは良かった

キャストは皆、歌もダンスもめちゃくちゃ上手くて、文句なしだった。帝劇作品はたいてい歌とダンスのどちらかには不安があるキャストが何人かいるものという印象だが(失礼)、今回は全く完璧だった。

井上芳雄さんがマックスを演じることには驚いたが、結構はまり役だと思った。井上芳雄さんといえば「ミュージカル界のプリンス」的な2枚目役ばかりやっている印象だったが、コメディもうまい。ただし、マックスは設定上レオよりは一世代は上の年代のはずだし、年齢差を超えた友情がこの作品のいいところだと思うので、そこは残念。

大野拓朗さんのレオは台詞が聞き取りやすいのがよかった。ミュージカルが本業じゃないはずなのに、歌もダンスも上手だな~と思ったら『エリザベート』とかロミジュリとか出てた人なのね。

ウーラ役の木下晴香さん。歌うますぎ、声量ですぎ。ダンスもうますぎ。まだ21歳、まじか。ウーラを彼女が演じると「頭の悪いブロンド美女」を消費する構図になってしまうのでは、という懸念をしている人もいたけど(映画版の記事参照)、歌のパワーで超力強い感じになっているのと、消費する側の井上さん大野さんがなんとなく品があるので、あんまりいやな感じにはなっていなかった。彼女、私が見た回は違ったけど、『アナスタシア』のタイトルロールもやってたのね。見たかった。今後に超期待。

ロジャー役の吉野圭吾さん、あんまり「オネエ」ぽくなかった?この人が「オネエ」ぽくないと、『ヒトラーの春』がウケた理由がなくなっちゃって話が成立しないんだけど・・・(ヒトラーが「オネエ」なら面白い、という感覚自体が現代では分からない着もするが)映画版だと『ヒトラーの春』を見ている観客の反応が描かれていたが、舞台版だとそれがないので、ロジャーの演技だけで舞台が成功したということを表現していて、関心した。

カルメン役の木村達成さん、劇中でも言われていたけど可愛すぎ。なんだか衣装が似合いすぎていて、これは「オネエ」じゃないんじゃないか。発声のギャグもお見事でした。

 

シアターオーブなので生オケなのだが、結構な割合がシンセだったのでちょっと悲しかった。まあ仕方ないが・・・

 

年明け『スパマロット』も見たいんだけど、『スパマロット』もこんな感じなのかな・・・勇気がいる・・・

 

2020年12月9日追記

ここに書いていたようなことをTwitterにも書いていたら、佐藤二朗氏にTwitterをブロックされていた。こうなってしまった原因は主に演出の福田雄一氏にあるので、佐藤氏にはあまり責任はないと思う。俳優さんは演出の意向にどれくらい逆らえるのか知らないが・・・
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【感想】ミュージカル『パリのアメリカ人』2017年ウェストエンド公演(配信)

コロナ禍の中、ミュージカルを無料配信してくれている"The Shows Must Go On"プロジェクトだが、ここ最近は日本国内からは見られなかったりしたので見ていなかった。

今週は久々に日本国内から見られる演目だったので、見ることにした。これからはトニー賞特集とのこと、楽しみにしてもいいのかな?

 

『パリのアメリカ人』は日本でも劇団四季で上演されていたが、筆者は見たことがなかった。1951年の有名なミュージカル映画をもとに、2015年にリメイクされたミュージカル。

今回配信されていたのは、2017年のウエストエンド公演とのこと。

youtu.be

 

ストーリーとしては、第二次世界大戦終結直後のパリで、画家を目指すアメリカ人の青年とパリジェンヌの女性が恋をするというもの。ヒロインは実はユダヤ人で、占領中に自分をかくまってくれたレジスタンスの青年に恩義を感じていて婚約しているが、なんやかんやあって主人公とくっついてハッピーエンド。

 

ストーリーを楽しむというよりは、ダンスや舞台美術を楽しむミュージカルだった。

ダンスのシーンの割合が非常に多い。ヒロインであるリズはバレリーナという設定で、モダン・バレエ(たぶん・・・)が取り入れられていて、技術的にも非常にレベルが高い。ミュージカルというよりも、むしろ、台詞や歌があるバレエ作品と言ってもいいくらいで、クライマックスには、リズが出演する新作バレエという設定の20分くらいの劇中劇がある。主人公のジェリーもやたらに踊りまくるけど、こいつは設定上はダンサーではなく画家ワナビ

逆に、ヒロインの婚約者のアンリはフランス人だが、アメリカでミュージカルスターになることを目指しているので、彼のナンバーはゴリゴリのブロードウェイスタイル。この点は逆転していて面白い。

劇中で唯一踊らないのは、作曲家のアダム。彼は足を引きずっていて、戦争中に怪我をしたと思われる。アダムは狂言回しの役割なので、彼が踊らないのは、現実の世界と劇中の芸術の世界の中間に位置しているからかなと感じた。

 

舞台装置もファイン・アート風で、画家を目指しているジェリーの領分になっている。

パリの街並みが大道具、スケッチ風のプロジェクションの両方で表現されている。風景をスケッチする様子を投影で表現する演出は、韓国の『レベッカ』でもあった演出だけど、素敵で好きだ。本作では、題材がパリの街並みなので尚更オシャレ。

物語の中盤、ジェリーが新作バレエの美術担当の職を得て、パトロンのマイロに誘惑され始めたあたりから、原色の抽象絵画みたいな背景や舞台装置が登場し始める。

クライマックスの劇中劇のシーンは、ジェリーの舞台美術・リズのバレエ・アダムの音楽が融合し、結実したという表現なのだろうか?(アンリは仲間はずれ?)

 

音楽はガーシュウィンなのだが、劇中では、劇中の曲はアダムが作ったと言う設定になっている。そのため、作中でアダムの曲が褒められていても、「いや、この曲作ったのアダムじゃなくてガーシュウィンだしな・・・」と思ってしまった。アダムは損なキャラだ。

このミュージカルがあまり好きになれないあたり、自分はガーシュウィン(というよりジャズ)が苦手だと気づいてしまった。もともと、題材は好きなはずの『ハミルトン』や『ヘイデスタウン』をどうも好きになれないのでラップが苦手なのは気づいていたのだが、どうもジャズもダメなようだ。最近、ラップやジャズのミュージカルが流行っているので、見られるものがなくなってしまって困る。アンドリュー・ロイド・ウェーバーに不老不死になってもらうしかないのかもしれない。

 

人物造形はあまり魅力的な感じはしなかった。全体的に、人物のステレオタイプがひどい。特に、ヒロインのリズは、フィクションに出てくる「パリジェンヌ」そのものという感じだった。パリ在住の女性は皆ああいう黒髪のボブカットなんかい。また、フランス語なまりやロシア語なまりもだいぶわざとらしく、結構鼻についた。

ただし、一見ブルジョワ坊ちゃんなアンリが実は戦中レジスタンスだったり、ステレオタイプから外そうという意識も若干見られた。

しかし、主人公のジェリーはかなりウザいキャラで、なぜリズがジェリーを好きになったのか全然分からなかった。リズが働いている店に来て営業妨害したり、リズをアメリカ風の「ライザ」と呼んだり、だいぶ押し付けがましい。アダムやアンリの方がいいやつじゃないか?

 

全体的に、ファイン・アートっぽいバレエや舞台芸術は素晴らしくて圧倒されたのだが、一方、わざとらしい「アートっぽさ」や「パリっぽさ」が若干違和感もあった。もしかすると、パリや「アート」っぽいものへの憧れに対するパロディかもしれない。

 

↓”The Shows Must Go On"の他の作品の感想は下記にまとめています

iceisland.hatenablog.com

 

【感想】ミュージカル『キャッツ』2020年

半年ぶりにリアル観劇してきた。

実はこれまで『キャッツ』を食わず嫌いしていたために見たことがなかったのだけど、配信で映画版(1998年の方)を見て好きになったので、見に行くことにした。

  

コロナ対応のために、回転席は販売しておらず、その他の席も1席おきに空けてあるという対応がされていた。それでも2/3くらいしか席が埋まっておらず、意外だった(『オペラ座の怪人』の再販売はすぐ売り切れたらしいのに・・・)。『キャッツ』は普段は団体客が多いんだろうか。

1席おきに空いているとすぐ前に人がいないので、舞台がよく見えるのは嬉しい。しかし、俳優さんたちの表情があまり見えず、ひきこもり期間中に目がだいぶ悪くなったことを実感する羽目になった・・・

 

基本情報

2020年9月12日(土)マチネ @キャッツシアター

キャスト

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劇団四季のキャッツはウェストエンド版よりも人間っぽいと思った。ウェストエンド版より、男女の猫が絡む場面が少なく、あってもちゃんとダンスをやってますよな場面が多かった。そのためエッチ度が抑えられていて、子供が来ても大丈夫な感じ。逆に、男女(雄雌)ともに同性の猫同士でワイワイやるシーンが多かったように思った。

 

グロールタイガーのナンバーは映画版にはなかったので初めてみたけど、楽しいですね。というか、映画版はこれがないのでガスさんがただ昔を懐かしんでるヨボヨボのおじいちゃんみたいになっていたので、カットしない方が良いと思った。マンカストラップはじめ若い雄猫ズが海賊のコスプレやってるのがかわいかった。

 

スキンブルシャンクスは若いイケメンの俳優さんが演っていておどろいた。もっとおじさん猫かと思っていた。

 

私の推し猫はミストフェリーズ君なのですが、出番がすごく多くてびっくり。センター張る場面めっちゃ多いし、メインの3人みたいな扱いだった。

 

ストーリーがあんまりないので、推し猫を見るミュージカルという感じで、何となくテニミュに近いものがあると思った。

 

See also:

素晴らしい方の映画版。

iceisland.hatenablog.com

物議を醸した方の(?)映画版。

iceisland.hatenablog.com