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観劇日記

【感想】二月大歌舞伎 昼の部(2019年)

はじめて歌舞伎を見に行きました。久々に中学・高校の友人と会ったら歌舞伎行かない?と誘われたのでほいほいついていくことにした。演目選びもチケット取りも全部友人に任せてしまって、前から3列目くらい、花道のすぐ横の、ものすごい良席を取ってもらった。ありがとう。

www.kabuki-bito.jp

 

2019年2月23日 昼の部

演目は

義経千本桜 すし屋の場

・暗闇の丑松

・団子売

の3つ。前者二つはネットであらすじを読んでから行った。

 

義経千本桜

尾上菊之助さんの惟盛が花道を通ったとき、こんな色っぽい男おる!?という感じでおどろいた。武士なのになよっとして弱そうなのがちょっと気になるけど、それがイケメンの条件なんだろうな。松緑さんの権太も楽しいし、悪いやつなのに憎めない感じでかわいい。お里ちゃんのしゃべり方や仕草は、かわいいの権化といった感じ。日本的かわいいって女役さんのことなんだなと思った。市井の人間には難しい。

権太の視点だと、自分の妻子を犠牲にしてまで父親とその恩人(惟盛)の一家を助けるのだけど、自分は父親に刺されて死ぬし、そもそも犠牲を払って助ける必要なんてなかったことが最後に分かり、カタルシスがない話だ。身代わりになって連れて行かれてしまった権太の奥さんと子供は、結局殺されてしまうのだろうか?そもそも、平民が我が身と妻子を犠牲にして武士の一家を助けるのって美談なんだろうか。奥さんと子供が連れて行かれるとき権太が辛そうな顔をしているのとか(この場面ではまだ身代わりになっていることは明かされていない)、話があらかじめ分かっていないと面白くないだろうという場面が結構あったので、予習は必要なんだなと感じた。

全体的に、前半の楽しい場面は大いに楽しめたけれども、後半のシリアスなシーンはちょっと間延びしてしまった感があった。最後の権太の死の場面は悲しいのだけど、長々と死ななくて家族みんなで延々悲しんでいるのが続いて、ちょっとなあという感じ。

 

暗闇の丑松

この演目は昭和9年が初演だそうで、大道具も凝っているし、丑松の殺人という重要な出来事が画面外で起こるところが、なんとなく映像的だと感じた。あらすじはこちらのページに。

暗闇の丑松 生世話の雰囲気 2006.6.12 W152

丑松の妻のお米さんは、養母には虐待されて育つし、夫(丑松)はその養母を殺しておたずね者になっていなくなるし、頼った先では強姦されるし、騙されて女郎屋に売られるしで、散々な人生だ。その人生で唯一のいいところは丑松だったのだろうけど、ようやく会えた丑松には信じてもらえず浮気したんだろうと詰られる。つらい。死ぬしかない。

丑松は、自分の妻(お米さん)の言い分は信じず、兄貴分(四郎兵衛)を信じるとは、ホモソサエティー体現野郎である。しかも、お米さんが女郎屋で働いていることについて「悪い男と浮気して騙されて売られたんだろう」といって責めるけれども、自分も女郎屋で買春してるじゃないか。また、四郎兵衛の妻のお今さんを丑松が殺そうとすると、お今さんが色目を使ってくる場面、丑松が「女というのは、怖い男に身を任せるものなんだなあ、お米もそうだったんだなあ」みたいなことを言うのだが、当たり前だろうと・・・貞操を守るために死ねということなんだろうか。ふだん社会でうんざりしている現象がたくさん出てくるのでむかついてしまった。むしろ、昭和初期から進歩がない現代社会が悪いのだけれど。

丑松役は尾上菊五郎さんだった。丑松はどうしようもないやつだけど、渋くてかっこいいので許される(?)。丑松は27,28才だと作中で言われているのだが、俳優さんは30~40歳かなと思った。が、帰って調べてみるとなんと御年76歳でびびった。人間国宝の力はすごい。後期高齢者の褌一丁姿を喜んで見ていた女になってしまった。

 

団子売

前の演目ふたつが悲劇だったので、楽しく見られて良かった。夫婦の踊りだそうで、かわいいし、夫婦っていいなという気持ちになってしまってあぶない。

 

初めての歌舞伎だったが、思ったよりかなり楽しめた。台詞はところどころ分からないところがあったので、慣れて聞き取れるようになるともっと楽しいだろうな。3つの演目全て見るとかなりボリュームがある(4,5時間)。一幕席は数千円で見られるそうなので、今度は一幕席で気軽に見るのもいいかもしれない。でも、良い席だと良い体験ができる確度が高いんだよな・・・