浅利慶太追悼公演行ってきました。
実は劇団四季はJesus Christ Superstarを5年くらい前に行ったっきり。こんなんでミュージカルファンを名乗っていいのか?という感じですが、浅利演出事務所との分裂騒動を知らずにずっと「私の好きな演目やらないなあ・・・」と思っていたのでした。
2019年8月9日(金)マチネ @自由劇場
川島芳子:坂本理咲
李愛蓮:樋口麻美
杉本:近藤真行
王玉林:桑島ダンテ
作品について
李香蘭や川島芳子ら、メインキャラクターの描写が少なすぎて、いまいち感情移入できなかった。特に、川島芳子は、川島芳子の考えではなく、浅利慶太の考えを喋っているのでは?と感じられ、気になってしまった。川島芳子と李香蘭の関わりが全く描写されていないし、当時人間として生きた川島芳子の行動とか心情が処刑のシーンまで描かれていないので川島芳子が狂言回しである必要性が伝わってこなくて残念。
「マンチュリアン・ドリーム」や「月月火水木金金」のプロパガンダなシーンはとにかく演出が格好良かった。当時の軍歌や歌謡曲の使い方も効果的だった。演出で歴史的状況を十分伝えられているのに、台詞で説明しすぎていて、くどくなってしまい、洗練されていない印象になってしまっているのがもったいない。
日本のミュージカルはオリジナルにしろ輸入ものにしろ、歴史的文脈を説明しすぎる傾向にあり、観客の知的レベルを軽視しすぎだと思う。(実際低いのかもしれないけど、そのために作品の焦点がぼやけてしまうのはイカンのでは)。威勢よく日の丸を振って出征兵士を送り出す国民や、「国際連盟!脱退!」と叫ぶ新聞記者とか、民衆の熱狂が描けているのも流石だった。 衣装もかなり考証がなされているのが感じられた。「満蒙開拓団」の襷ほしい。
結局、全体が2幕の「わだつみ」と「海ゆかば」への前座でしかないのだなあと感じた。それはそれでいいけれども、この2つのシーンって朗読と映像なんだから、ミュージカルである必要がないでしょう?この演出の方法、「夢から醒めた夢」の難民の子供のシーン(というより、Miss SaigonのBui Doi)の発展系なので、この演出が気に入ったのだろうか。
浅利慶太の書く歌詞はダサいなあと思っていたけど、実際舞台で見ると予想よりは気にならなかった。日本将校や政治家の台詞回しはキレがあって良かったけど参考文献があるからだろうか。
溥儀のシーンはギャグなんだろうか?いまいち笑えないので反応に困る・・・
この公演について
生オケじゃないのがやっぱり悲しい。2012年ごろは生オケだったと思うのですが。浅利慶太演出事務所だけじゃなくて、劇団四季本体ももう生オケやっていないとは本当?
野村玲子さんも坂本理咲さんも李香蘭や川島芳子を演じるにはお年を召しているのでは・・・若者しか若者の役をやってはいけないと思っているわけでは決してないけれども、やはり若者には見えなかった。川島芳子のダンスが簡略化されていた?のが仕方ないけど少し残念。ただし歌は高音まで綺麗に出ていてさすが。
玉林役の桑島ダンテさんは台湾出身の俳優さんらしく、日本語が少し片言だったけど良かった。中国・韓国出身に日本風の芸名付けさせるの、まだやっているんだなあ。帝国主義的だからやめてほしい。
アンサンブルの方々が歌もダンスも上手いので驚いた(最近帝劇ばかり見ていたので)。日本将校の方々の動きが日本人のおじさんっぽくて良かった。
文句ばっかり書いてしまったけど良い作品だと思っているし、この先も再演してほしいけど、難しいんだろうか。商業的に採算の取れるオリジナルミュージカルを書ける数少ない日本人を亡くしてしまったのだなあと実感して、悲しい。