ソウル観劇旅行2本目は、ミュージカル『スウィーニー・トッド』でした。日本でティム・バートン主演の映画を見て予習してから行きました。
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2020年1月11日(土)ソワレ@シャルロッテシアター
キャスト
スウィーニー・トッド:ホン・グァンホ
ラヴェット夫人:リナ
ターピン:ソ・ヨンジュ
アンソニー:イム・ジュニョク
トバイアス:シン・ジュヒョプ
感想
主演はホン・グァンホさんの回と、パク・ウンテさんの回で迷ったのだけれど、ホン・グァンホさんを見てみたかったのでホン・グァンホさんの回にした。数年前ロンドンで「ミス・サイゴン」を見たとき、トゥイ役はホン・グァンホさんじゃなかったので。
全体に映画版より性描写がえぐくて見てて厳しい気持ちになった。映画ではアラン・リックマンがやってて何故かあんまり不快感のなかったターピン判事は(なんとなくかわいいおじさんぽい感じがあった)、本作では本当に心の底から気持ち悪い。上半身裸・下半身ステテコ一枚になって「ジョアンナー!」と叫びながら自分を鞭で叩く。キモすぎて早く殺されてほしいレベル。帰ってきてから知ったのだけど、ターピン役のソ・ヨンジュさんってまだ21歳なのね・・・!(←同姓同名の方と勘違いしておりました。ご指摘くださった方、ありがとうございました。)凄い演技力だった。気持ち悪かったけど。トッド氏の奥さんルーシーのレイプも映画ではちょっと曖昧になってたけど、舞台では明確にレイプだった。反対にグロ方向の描写は映画ほどではない(当たり前だけど)。血もあんまり出ないし、ゴキブリもいないので、その点は安心できる。
トッド&ラヴェット夫人の中年カップルはまるで救いがないので、そのぶんジョアンナ&アンソニーの若者カップルに癒された。映画は若者カップルの歌がカットされているので意識しなかったが、ジョアンナ:ソプラノ、アンソニー:テノール、ラヴェット夫人:メゾソプラノ、トッド:バリトンなので音楽的にはオペラティックな作りなのかもしれない。ジョアンナ役のチェ・ソヨンさんの高音が伸びまくりで気持ちよかった。
映画のヘレナ・ボトム・カーターがかわいくて大好きだったので、リナさんのラヴェット夫人は韓国の陽気なおばちゃん感があって個人的にはちょっと違うかな~と思ってしまった。韓国ミュージカルでは概して女性のコミカルなシーンがおばちゃん的になっている気がしてちょっと食傷気味。トバイアス(トビー)少年にアジュンマー!(おばさん)と呼ばれてるのは和んだ。
主要人物3人はそれぞれ愛のあり方が違うのかなと。ターピン判事は人を愛しても奪うことしかできない人。ラヴェット夫人は与える愛の人で、愛情に飢えた子供であるトビー君に対してはそれが上手くいっていて相思相愛なんだけど、トッドに対しては残念ながら押し付けになってしまっているので上手くいかない。トッドについては正直よく分からない。愛を「与えられる」しかできないのかなと思った。彼は「何でルーシーが生きているのを教えてくれなかったんだ」なんて受動的すぎませんか。ラヴェット夫人が殺されるのはかわいそうじゃない?トッドに奥さんが生きているのを黙っていただけで、何にもしてないのに(人をパイにして売ったけど)。「ジョアンナも母親似で美人だといいな」と何回も言うし、"Pretty Woman"の歌詞も、見た目しか見てないんかい、という感じ。そのくせルーシーやジョアンナの実物を見ても気づかないし、なんなんだこいつは?
映画ではカットされていた民衆の合唱は、雰囲気作りや状況説明のためだけに存在している、ギリシア演劇でいう「コロス」というものだろうか。衣装も「退廃的なビクトリア朝」テンプレな感じの、スカートが破れた娼婦とか。オタクはこういうの好きだよね(?)。
今回、1階のセンターブロックでかなり良席だったのだけど、トッドの床屋は2階なので、1階から見ると見上げないといけなくて若干見づらかった。2階席から見るほうがむしろ見やすいのかもしれない・・・
実は1幕中尿意がやばかったのであまり集中できなかった。カフェインに弱い人間は観劇前にコーヒーを飲んではいけないという非常に初歩的な教訓を得た。