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観劇日記

【感想】ミュージカル『ファンレター(팬레터)』2017年ソウル公演(配信)

大学路ミュージカルのネット配信プロジェクト"K-MUSICAL ON AIR"で『ファンレター』を見ました。無料で大学路ミュージカルが4本も見られるだと?しかも英語字幕つき。

www.kmusicalonair.com

 

今年の冬にソウルまで見に行った『ファンレター』ですが、今回の配信は2017年の映像ということで、違うキャストさんで見られた。

↓あらすじと2020年冬の感想はこちらから

iceisland.hatenablog.com

 

基本情報

キャスト

キム・ヘジン:キム・ジョング

チョン・セフン:ムン・テユ

ヒカル:ソ・ジョンファ

イ・ユン:ジョンミン

イ・テジュン:ヤン・スンリ

キム・スナム:イ・スンヒョン

キム・ファンテ:クォン・ドンホ

 

感想

前回見たときとは、セフン・ヘジン先生は違うキャスト。ヒカルや7人会の面々は同じキャストだった。

ムン・テユさんのセフンは文学少年というよりオタクっぽさ全開。普段はコミュ障なのに、文学の話になったとたん(オタク特有の早口)になってた。しかし、それが「セフンの自身のままでは愛されない」という自己認識に繋がっているのかな。ヘジン先生のことは、はじめは純粋に文人として憧れの人で、思いがけず女性として好かれてしまったので困惑している感じだった。

ヒカルは、ヘジン先生のミューズとしてよりも、セフンのエゴとしての側面が強く出ている感じがした。前回見たときのヒカルもソン・ジュンファさんだったけど、ムン・テユさんのセフンが聖人君子っぽくないせいで(良い意味?で)、ヒカルも残酷な面が引き立っていたのだと思う。

ヒカルは「嘘をついてでも愛されたい」というセフンのエゴだけれども、ついに、セフンの「自分自身を愛してほしい」というエゴがそれを上回って、ヒカルは消えてしまうことになった。セフンの心の中で虚構(=ヒカル)を現実(=セフン)が打ち倒してしまったから、セフンは小説を書けなくなってしまった。ラストでヘジン先生がヒカルをセフンに返してくれたシーンは、ヒカル(=セフンの自己愛)をセフンが受け入れることで、セフンは自分自身を愛せるようになったのかなと思った。

 

ジョンミンさんのユン先生は、ずっとムスッとしているのがいい味出していたと思う。セフンに嘘の手紙を読み上げる場面なんか、無表情で「ユン先生は天才だ」云々と言うので笑う。その直後にニコニコでセフンを「辛かっただろ」と言ってナデナデするし、次のシーンでは死んでるし、感情の行き場がないんですが???

前回見たヘジン先生はメガネだったので(キム・ジェボムさん)、キム・ジョングさんのメガネレスなヘジン先生は新鮮だった。結構天真爛漫な感じでいいですね。(メガネじゃないのが残念だけど)

同じ作家として、ヘジン先生の「虚構の中で芸術的に死にたい」という欲求を理解したのがユン先生。逆に、現実と自分自身をぶつけたのがセフン。虚構の中で美しく死ぬのも良かったかもしれないけど、ヘジン先生が最後にセフンと現実を受け入れてくれて良かったなあ。

 

2回目の鑑賞ということで、演出的に対になっている部分を色々見つけてオッとなった。いやあ、よく考えられているなあ。

・セフンが紙で手を切ってヘジン先生に手当てをしてもらうシーンと、自分で手を刺してヒカルを消すシーン

・陽光の中のヘジン先生と、暗い部屋のヘジン先生

・ヘジン先生とユン先生の咳き込みからのお互いに背中さすさす(比較的元気なとき、死の直前)

・セフンからヘジン先生の最初の手紙と、ヘジン先生からセフンへの最後の手紙の日付(3月17日)

 

映像で見ることで、照明が見やすくなって、ちょいちょいセピア色っぽい照明になっていたことに気づいた。

逆に、カメラが舞台面よりかなり上側にあったので、キャストさんの表情やダンスなどの細かい部分は見づらかった。仕方ないけど。

英語字幕がついていたのだけど、若干読みづらい英語で(私の英語力の問題か)、頭がキャパオーバーになった・・・欲を言えば、あの素晴らしい日本語字幕で見たかったな・・・日本公演待ってます!!!せめて日本語字幕つきのDVDをですね、売ってほしい。

 

See also:

あらすじと、ソウルで観劇したときの感想。

iceisland.hatenablog.com