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観劇日記

【感想】ミュージカル『新テニスの王子様 The First Stage』

『新テニミュ』を見に行ってきた。漫画『テニスの王子様』の続編である『新テニスの王子様』をミュージカル化した作品である。

「新」テニミュということで、今までのテニミュから音楽的に進化していて、驚いた舞台だった。

 

基本情報 

2021年2月7日(日)ソワレ@日本青年館ホール

キャスト

入江奏多相葉裕樹

他は省略

 

ストーリー

テニスの王子様』の登場人物である中学生テニスプレーヤーたちが、高校生の日本代表合宿に参加するという話だ。中学生たちは、ペアを組んで試合をし、負けた方は合宿から追い出されてしまう。

勝った方の中学生たちは、高校生たちに混じって練習するなかで頭角を現す。実力者の鬼先輩(鬼のような先輩ではなく、鬼という苗字の先輩)に率いられて、高校生チームと試合をし、勝利する。負けた方の中学生たちは、追い出されると思いきや、大自然の中で三船コーチにスパルタ教育を受け、一回り強くなって帰還する。

 

感想

キャスティング・ストーリーについて

まず、キャストに実力のある役者さんが大量に投入されていてびっくりした。前評判は聞いていたけど、予想以上だった。

今までのテニミュでは、基本的にはキャラクターは中学生だけで、それを演じる役者さんたちも新人かそれに近い人たちだった。今回は、高校生役・コーチ役に、既にミュージカル俳優としてキャリアを積んでいる俳優さんが多くキャスティングされていて、非常にレベルアップしていた。

特に、三船コーチ役の岸祐二さんは桁違いに上手かった。東宝レミゼでアンジョルラスやジャベールを演じたこともある方らしい。なんとなく三船コーチのシーンだけ曲がレミゼ風で、「さあお聞き下さい」みたいな雰囲気だった。三船コーチは革命起こし役なので、ジャベールよりはアンジョルラス(見た目以外)。

他のコーチ役、高校生役もレベルが高かったが、その中でも、鬼先輩役の岡本悠紀さんが良かった。歌もダンスもキレがあるし、演技も芸達者だった。鬼先輩は、歌舞伎で見得を切るみたいな動きがダンスに入っていたり、土蜘蛛の糸みたいなやつを投げたり、演出が凝っていて優遇されている。

また、出番が多い役に歌がうまい役者さんを割り振るように、キャスティングの基準が変わったのかと思う。

 

三船コーチと鬼先輩が、見た目のインパクトのみならず、歌もうまいし、曲がたくさんあるしで、かなり目立っていた。そのため、テニミュって美少年たちじゃなくて、おじさん(とおじさんみたいな人)を見るものなんだっけ?となった。ストーリー的にも、勝ち組中学生は鬼先輩に率いられ、負け組中学生は三船コーチに率いられ、で同じく顔の怖いおじさんに中学生ズが率いられる構図になってしまっていたのも、しつこさがある。これは原作のせいだからいかんともしがたいが・・・同じ展開になっているのを逆手に取った演出にしたら良かったと思う。

逆に、主人公のはずの中学生たちの印象がイマイチ薄くなってしまっていた。唯一出番が多かったのは跡部様で、演じている高橋怜也さんは新人なのに歌が上手いなあと思ったら歌手さんらしい。跡部王国の背景に城が出るのはFrozenのパロディなんだろうか。

私は赤也くん役の前田隆太郎さんが好きで見に行ったはずなのだが、あまり歌うシーンがなく(白石との二重唱は良かったが)、残念。歌も上手い役者さんだと思うのだが・・・

 

原作からして、『新テニ』は『テニプリ』よりもギャグ感のつよい作品なのだが、周りの観客があまり笑ってなくて困惑した。

「桃城の手首を完全に粉砕」したり、ガットが2本しかなかったり、試合相手を3回も磔にして「テニスに逆転ホームランはねえ!」と怒られたり(しかも結局KO負け)、5個のボールを同時に打って鷲を撃退したり(何のこっちゃ)、絶対笑うところだろ!と思うのに、みんな笑ってない。何でだ。慣れたんだろうか。

しかも次回は、ネットを炎上(物理)させたり、ダブルスで裏切ったり、試合中に海賊に刺されたりするわけでしょ?笑うでしょ、絶対。

 

音楽について

作曲家は、今までの佐橋俊彦さんから兼松衆さんという方に代わったそうだ。曲が非常にオシャレでキラキラになっていた。また、シーンによる曲調の使い分けが上手かったし、三船コーチのシーンはレミゼ風の曲だったりして遊び心が感じられた。個人的には、テニスの試合シーンの曲が、毎試合違っていたのが、芸が細かくて好きだ(今まで全試合同じだったよね?)。

話の構成上、学校単位ではなく、各キャラクター単位で話が進行するようになった。そのため、ソロ曲や二重唱が多くなり、合唱や群舞が少なくなって、寂しい。私はミュージカルの合唱が好きだが、2.5次元舞台はたいてい群衆が登場しなくて、合唱も少ない。唯一それを埋めてくれるのが、学校単位の合唱シーンだったのに・・・さらに、原作の熱心な読者というわけではないので、学校単位でなくキャラ単位で認識するには、キャラが多すぎて厳しい。

また、今までの曲はシンプルだったが、今回はソロ曲も二重唱もかなり歌うのが難しそうな曲が多かった。重唱でハモる部分がいくつかあったけど、難しすぎる気がする。

 

作詞家も、三ツ矢雄二さんから変わったんじゃないかと思うが、情報が見つけられない。(教えてください)変わってませんでした。

今までの歌詞は、ミュージカルの歌詞としては人称が不自然だと思っていたが(歌い手と歌詞の視点が異なっていた)、それが解消され、自然になったと思った。しかし、いかんせんあまり歌詞が聞き取れなかったので、定かではない。日本青年館ホールの音響がイマイチなせいなのか、役者さんたちがフェイスシールドをしているせいなのか分からないが・・・

 

音楽的には非常にレベルアップしていて、2.5次元舞台だから芸術的にはイマイチという印象を払拭したいのかなと感じた。キャストのギャラがチケット代金に跳ね返ってきているような気がするけど、気にしない。

一方、シンプルイズベストな大道具に照明を工夫してテニスの試合を表現する形式は変わっていなくて安心した。この手作り感はなくしてほしくない。

 

追記

音量が大きすぎて結構苦痛だった。改善してほしい。

初演のため、曲の予習、復習が出来ないのは残念。曲を耳に慣れさせてから舞台に臨みたいタイプなので。公演の前に曲を公開しませんか?

 

See also:

これまでのテニミュ感想。だんだん好きになっている・・・

iceisland.hatenablog.com

はじめてテニミュを見た回。

iceisland.hatenablog.com