RED & BLACK

観劇日記

【感想】ミュージカル『キム・ジョンウク探し(김종욱 찾기)』(配信)

ミュージカル『キム・ジョンウク探し(김종욱 찾기)』を、YouTubeでの無料配信で見た。韓国観光公社主催の無料配信企画はもう3回目だが、こんなに気前がよくて大丈夫だろうか?

 『キム・ジョンウク探し』は、大学路でロングラン上演されているコメディ・ミュージカル。映画化もされていて、映画版(邦題:『あなたの初恋探します』)は俳優のコン・ユ氏が出ているので有名らしい。Amazon Primeで見られるらしいので、今度見たい。

 

キャスト

女性:チョ・ヨンファ

男性/キム・ジョンウク:パク・ガンラム

マルチマン:ムン・ジュニョク

 

主人公の女性と男性は、その公演で演じる俳優の名前になるらしい。「マルチマン」はその他モブキャラを全部一人で演じる。

 

あらすじ

主人公の女性(今回はヨンファ)は新聞記者だが、女性であるために海外の仕事をさせてもらえず、編集長と喧嘩になり、売り言葉に買い言葉で仕事をやめることになってしまう。ヨンファの父は軍人(警察官?)で、娘が仕事をやめたことを知ると、結婚させようとする。父が出した結婚相手募集の新聞広告を見て、(意外にも)いい男がやってくるが、ヨンファは「初恋の相手が忘れられない」と言って断る。

そこで父親は、もう一人の主人公である男性(今回はガンラム)が経営する「初恋探し事務所」に娘を連れて行く。ヨンファは9年前、インド旅行で会った「運命の人」キム・ジョンウク氏が忘れられないと語る。

ヨンファとガンラムは初恋の人を探し始めるが、名前しか分からないので捜索は難航。しかし、一緒に財布をスられたり、山で遭難したりしているうちに、2人は距離を縮めていく。

契約の最終日、2人はクラブに飲みに行き、ガンラムはヨンファに告白しようとするが、ヨンファは逃げ帰ってしまう。ヨンファが落としたキム・ジョンウクの手帳と身分証明書を見て、ガンラムは驚く。実はヨンファは、キム・ジョンウクを美しい思い出のままにするために、ヨンファの方からわざと連絡を絶ったのだった。

ついにキム・ジョンウク氏に会い、彼への想いを断ち切ったヨンファ。実は、ヨンファとガンラムは9年前に既に出会っており、ガンラムこそが「運命の人」だったということが明かされ、ハッピーエンド。

 

感想

ストーリーはお約束のラブコメなので少し退屈だった。

主人公の女性(ヨンファ)のキャラクターがいまいちしっくりこなかった。

ヨンファを演じているチョ・ヨンファ氏(ややこしい)が結構幼い感じで、22歳のインド旅行のシーンではちょうど良いが、31歳の新聞記者にはちょっと見えない。見た目に頓着しないという設定なのは分かるが、化粧をほぼしていなくてカジュアルな服装だし、俳優さんも若そうなので、女子大生くらいに見える。最後にキム・ジョンウク氏と会うシーンではお洒落をするが、それもピンクのミニスカートのワンピースで、かなり不自然な感じがする。それに比べると、日本版の彩吹真央さんはいかにもなキャリア女性で、ビジュアル的な納得感がある。

新聞記者なのだからインテリなのかと思いきや、英語は苦手なようだし、社会的な階層もいまいち謎だった。

ヨンファの父親は軍人で、かなりパターナルな人間として戯画的に描かれている。ヨンファはそういう父の娘として育ったので、反発して自由奔放に振舞っているのだが、実際は結構臆病だという設定。作品は2006年初演だが、今日の韓国フェミニズムっぽさも若干ある。ヨンファの父みたいに家でもああいう軍隊用語?で話す人っていうのは、韓国ではあるあるなんだろうか。

ヨンファの男の趣味には異常に共感してしまった。海外旅行好き(しかもインドとかヒマラヤ)で哲学を専攻していた男!!!アラサーの新聞記者の女がそういう男が好きで、しかも「運命の男」との思い出を大事にしながら生きているという設定は異様にリアリティがある。

なので、最後に安定志向のガンラム氏とくっつくのはあまり納得感がない。見合いで来た男の方がよくないか?いや、お約束だから仕方ないんだけど・・・

 

ガンラムとキム・ジョンウクの2役を演じているパク・ガンラム氏(ややこしい)の演技は良かった。2人の違いは眼鏡のありなしだけなのに、何故かちゃんと別人に見えるからすごい。

モブ全員を全部演じる「マルチマン」を演じるムン・ジュニョク氏はなかなか芸達者だった。「マルチマン」の役柄はステレオタイプな感じが多い。インド人の役も演出的にはひどくてステレオタイプを指摘するまでもないのだが、曲は妙に歌詞がロマンチックで素敵で困惑した。

 

全体的に脚本はちょっと粗が目立つ。ヨンファは運命の人を探すためにインド旅行に行ったと語っているが、英語ができないんだから、ふつう恋人は国内で探したほうが良いのでは・・・?

ガンラムは通信社をクビになって「初恋探し事務所」をはじめるのだが、そもそも通信社に勤めているから人探しを頼まれて始めたので、クビになってからは情報にアクセスできないのでおかしい。いきなり立派な事務所を借りているし、おぼっちゃんなんだろうか。

 

この作品は若手の登竜門ということで、キャスト3人とも歌もダンスも演技も発展途上な感じではあったが、それなりに楽しく気軽に見られる演目だった。カップルがデートで見るのに人気らしいので、これくらいのノリがちょうどいいかもしれない。

曲もめっちゃ気に入るというほどでもなく普通だが、「ソウルでキムさん探し(探し!)」の曲は楽しくて好き。

 

See Also:

『キム・ジョンウク探し』と同じ、大学路発のミュージカル『ファンレター』のあらすじ&感想。

iceisland.hatenablog.com

こちらは、『ファンレター』を配信で見たときの感想。これも韓国観光公社のミュージカル配信。ありがたい

iceisland.hatenablog.com