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観劇日記

【感想】ミュージカル『ダブル・トラブル』2021年(配信)

『ダブル・トラブル』を配信で見た。7月8月は遠征とかでたくさんお金を使ってしまったので、配信で我慢しているけど、配信を週に2個も見たら意味がないかもしれない・・・

 

キャスト

ブロードウェイ・チーム

ジミー他:原田優一

ボビー他:太田基裕

 

感想

1940年代、ミュージカル作曲家&作詞家の兄弟ジミーとボビーは、ミュージカル映画の制作のためにハリウッドに招聘される。おかしな雇い主や助手、謎の美女レベッカに振り回されて喧嘩してしまい・・・というドタバタコメディ。設定的にはガーシュイン兄弟を意識しているのかなと想像。

この演目、全然聞いたことがないし、Wikipediaの記事もないので、ほぼ無名の作品なんだろうか。何年に発表された作品なのかも分からなかった。

 

一番の見所は、2人の役者が全ての役を演じるというところ。なぜか、今年はこのタイプのミュージカルをいくつも見ている。(『ジェントルマンズガイド』と『キム・ジョンウク探し』)。しかも全部配信。

役の演じ分けがテクニカルなのはもちろんだが、この作品では、早着替えが大変すぎてアクロバットの様相を呈しており、それ自体がメタなギャグになっているのが面白かった。人形や録音を駆使してがんばって複数人いるかのように見せているのだが、最後には主人公2人が等身大パネルになってしまい、さすがに笑ってしまった。

 

原田優一さんは『マリー・アントワネット』のルイ16世しか見たことがなかったけど、雰囲気が全く違って芸達者で驚いた。無名の作品だけあって曲がいいわけではないし(失礼)、自分はジャズが苦手なのだが、原田さんの歌は充分堪能できた。

太田基裕さんははじめて見たが、太田さんも演技が上手い。シーモア(太田さん)がジミー(太田さん)のモノマネをするシーンは、ややこしいシーンなのに演じ分けていてビックリした。

 

ラストシーンでは、「美女」レベッカが「男性である」ということがラジオで明かされるのだが、この展開はさすがにどうかと思った。レベッカ性自認については明確に描かれていないのでトランスジェンダーかどうかは分からないが、女性ととしてパスする外見で女性として仕事をしているという設定。若いとき男性としていたのを公共放送で暴露する、というのは明らかにアウティングを想起させるし、それをギャグにしてめでたしめでたしと終わるのは、さすがに笑えない。コメディ作品は制作側と観客は「笑える」の基準がずれると全く面白くなくなるので、もうちょっと価値感の変化には敏感になったほうが良いと思う。

 

See also:

『ジェントルマンズガイド』は1人9役!

iceisland.hatenablog.com

『キム・ジョンウク探し』はもはや一人何役か不明。

iceisland.hatenablog.com