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観劇日記

【感想】『サーシャと魔法のワンダーランド』2014年

Amazon Primeで『サーシャと魔法のワンダーランド』という映画を見た。原題はСтрана хороших деточек(良い子たちの国)。

ロシアの子供向け映画である。字幕版もあるようだがAmazon Primeでは吹き替え版しか無料になっていなかったので、吹き替え版を見た。

いつもはネタバレを書いていますが、この作品は展開の予想外さが良い味を出していると思うので、今回はネタバレなしで感想を書きます。

 

あらすじ

主人公サーシャはいたずら好きの女の子。大晦日の日、いたずらをして怒られてしまったサーシャは自分の部屋に閉じこもる。家族たちが「来年は良い子に来て欲しい」と願うと、「良い子」の女の子が現れ、家族はサーシャのことを忘れてしまった。

一方、サーシャは「大使」と名乗る謎の男に、「良い子の国」という不思議な世界に連れて行かれてしまう。「良い子の国」では、子供たちは遊んだりお菓子を食べたりせず、一日中労働に従事していた。さらに、これまでの記憶も消されてしまうという。逃げ出そうと奮闘するサーシャだが・・・

 

感想

「子供は厳しく躾けるよりもノビノビ育てた方が良いよね」という、子供に寄り添った映画。「良い子の国」は、記憶を消された子供たちが「役に立つ」ことだけをしているディスとピアだ。監視社会、労働賛美、国家主義(国家なのか不明だが)などはソ連を思わせるが、異常な健康・清潔志向は現代の風潮に対する風刺なのかなと思った。

ストーリーは意外な展開に独特の魅力があり、結構楽しく見られる。ただし、子供向け映画にしても、さすがにプロットが雑すぎじゃないだろうか。終盤、ご都合主義と因果関係が謎な展開でどんどん意味不明になり、いろいろな疑問点が解消されないまま慌しく終わる。全体で100分と短いが、最後の方はもうちょっと丁寧にやった方がいいと思った。ツッコミどころ満載なので、そういうのが好きな人には良い。

犬に比べて猫が露骨に贔屓されている展開には笑った。ロシアには猫が好きな人が多い気がする。

 

他の方の感想にCGがひどいとあったが、技術的にはそれなりにちゃんとしているように感じた。少なくとも、ソ連時代に比べるとマシ(当然だ)。ちょっとセンスは古いし、ハリウッド的な派手さはないけど、レトロで味がある。あと、カメラアングルとカットの移り変わりの間が独特で面白い。

子供が変な男にCGの国に連れて行かれるというストーリーは『チャーリーとチョコレート工場』を露骨に髣髴とさせるが、『チャーリーとチョコレート工場』ほど気持ち悪くはないので、良かった。

 

ミュージカル映画」と冒頭に書いたが、曲は少なめで5曲くらい。子供たちのダンスは、あんまり上手くなくて、近所の小学生が踊っているような感じだが、この作品のテーマに合っている。大使役のВячеслав Манучаров氏は歌手やミュージカル俳優ではなくストレートプレイの俳優さんのようだが、歌はけっこう上手かった。

 

吹き替え版でも、歌はロシア語のままである。この映画に吹き替えをつける必要はあっただろうか。この映画を子供に見せる人はあまり日本にはいないのでは・・・

吹き替えは、英米風(?)の典型的な洋画の吹き替えの喋り方なので、ロシア人がこういう喋り方になっていると違和感がある。

 

See Also:

こちらはマジでCGがやばいので見てほしい(見なくても良い)。

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ロシアのミュージカルに関心のある方はこちらもどうぞ。

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