『マリー・アントワネット』韓国公演を配信で見た。韓流ぴあによる日本語字幕がついている。ありがたい。(けど1公演6000円はさすがに高くないか?ちょっと前にやっていたNAVAR後援ライブでは2000円くらいだったはずだよね・・・)
今年、ほぼ同じ演出の日本版を生で見たのだが、やっぱり生観劇の方が楽しいなと再認識した。
キャスト
マリー・アントワネット:キム・ソヒョン
フェルセン:ミン・ウヒョク
ルイ16世:イ・ハンミル
ランバル:パク・ヘミ
レオナール:ムン・ソンヒョク
マルグリッド・アルノー:キム・ヨンジ
オルレアン公:キム・ジュンヒョン
エベール:ユン・ソンヨン
感想
演出は、日本の新演出版とほぼ同じ(だと思う)。というか韓国版の演出を日本に逆輸入したので当たり前かも。
私は日本版は今年の2月に見たので、わりと記憶に新しい状態で見た。ストーリーについての感想はこのときに散々書いたので、こっちを読んでください。といっても5000字以上もあって長すぎて自分で読みたくないレベルなので、まとめると、王族側にばかり肩入れして革命側を貶めていてケシカランと書いた。
ストーリーが気に入らないのに何で見たんだと言われそうだが、演出はかなり気に入っていたんですよ。
ただし、生で見たときは良いと思った演出も、今回はそこまで感動せず。こういう豪華絢爛系の舞台は、生で見てこそ感動するものかもしれない。仮面舞踏会の証明とか、処刑シーンの回転盆とか、かなり気に入ってたんだけど。
今まで、配信のカメラワークを気にしたことはあまりなかったんだけど、今回のカメラワークはシーンの切り替わりが頻繁すぎたように思う。ほとんど2小節か4小節ごとにカメラが切り替わっており、結構気が散ってしまった。
あと、韓国でミュージカルを見るときは生観劇でもいつも気になっていることだが、キャストのマイクの音量が大きすぎる。さらに、今回は、アンサンブルとメインキャストのマイク音量にかなり差がつけられており、アンサンブルの声がぜんぜん聞こえなかった。『エリザベート』同様、この演目でもアンサンブルが重要な役割を果たしているはずなのに、全然迫力がなくてガッカリだった。歌だけでなく、ダンスもあんまりキレがなかった。
日本版と歌詞が違っているのに気づいたところが少しだけあった。
1つ目は、「恐怖政治」の曲で、ロベスピエールらジャコバン派の面々が「恐怖政治を打倒しよう」と歌っていた。ジャコバン派が恐怖政治を打倒・・・?単に字幕か翻訳のミスかもしれない。ただし、この時点では実際には恐怖政治は始まっていないので、いずれにしろ変なシーンだ。
2つ目は、ラストの曲「どうすれば世界は」。この曲は日本版と歌詞がかなり違っていたように思う。うろ覚えなんですが、「許す」者が世界を救う者である、という感じの歌詞が入っていたのが印象的だった。
この作品、結局は暴力はよくないという話だと思うのだが、原作と初演版にはあったキリスト教要素を排除したせいで、かなり薄っぺらくなってしまっているように思われる。だから、最後の曲で失われたキリスト教要素をわずかにでも登場させているのは私は良いと思っている。
初回見たときは、最後にマルグリッドがエベールとオルレアン公を告発して失脚させるのはなんでだろうと思っていた。今回見て、マルグリッドも結局は自分と思想の異なる者を殺すしかなかった、ということなんだろうかと思った。原作で革命派の修道女アニエスが、非暴力を訴えるためにマラーを暗殺するという皮肉な行動と対応しているのかもしれない。
あと、初回を見たときよりも、悲惨な境遇で育ったマルグリッドが、信頼や愛を知ることで成長しているというところが気にかかった。その愛を与える存在がマリーやフェルセンら王族貴族側の人間というのが、なんだかなあ、貧民は愛を与えることすらできないみたいで(実際はそういう傾向はあると思うが)、遠藤周作の思想とは逆じゃないだろうか。原作ではその役割はアニエスや兎のおばさん(セックスワーカーの先輩)なのになあ・・・
キャストは全体的には日本版の方が良かったなあと思ってしまった。韓国ミュージカル界の方が歌うま率は高いはずなので、これは珍しいことのように思う。マリー・アントワネット役のキム・ソヒョンさんは、高音の響きがあんまり好きじゃないなあ、2幕のドラマチックな曲は結構良かったように思うけど。
あと、全体的に、王族貴族っぽい演技ではないなあと思った。日本だと、王族の役を演じる際の「上品さ」は結構厳しく批評されるので、王族に対する憧れの程度を反映しているのかも。
レオナールは日本版と違って若い方がやってて、これはこっちのが好み。
See also:
上でもリンク貼りましたが、日本版を見たときの感想。
原作の感想。