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観劇日記

完璧な労働運動賛歌|『ニュージーズ』2017年映画版

『ニュージーズ』ブロードウェイ版を見た。NetflixやDesney+で"Newsies: The Broadway Musical"という題名で配信されているバージョン。ただし、日本版では配信されていないので、日本語字幕もついていない。そこで、霧島神樂様(@hananinakuguis7)が作成された日本語字幕で見させていただいた。ありがとうございました。

ちなみに日本版公演はチケットが取れなくて見たことがないです。

 

1890年代ニューヨークで実際に起きた、新聞売りの少年(ニュージーズ)のストライキ事件を基にしている。勝手な不利益変更(新聞の卸値を値上げする)をしてきた新聞社の資本家たちに対し、ニュージーズが労働組合を結成し、ストライキで闘うというストーリー。

ストを描いた作品をディズニーが作れるのお~?と半信半疑で見たが、なんのなんの、完璧な労働運動賛歌だった!運動の大事なことが全て詰まっている、教科書みたいな作品だった。しかも、ものすごく元気が出る。全世界の労働者が見るべき。

 

資本家は色々な方法でニュージーズのストライキを潰そうとしてくる。暴力を使ったり、買収しようとしたり。そんなとき、ニュージーズが困難を乗り越える手段は「一緒に闘う仲間を増やす」ことだ。1つのグループで始まった運動は、ニューヨーク中のニュージーズに広まり、最後には全ての児童労働者に広まっていく。ゼネストだ。社会機能が停止してしまい、ついに資本家は降参!

立場の弱い労働者が資本家と闘う唯一の方法は団結することだ、ということがハッキリと描かれていて、非常に教育的。これが分かっていない人が運動の中にもいるんだよなぁ

ニュージーズは、誇りを持った立派な労働者だ。しかし、児童労働がひどいということ、本当は子供は仕事ではなく勉強したり遊んだりするべきだと分かっている。このあたりのバランス感覚もさすが。

 

しかも、マルクス疎外論を分かっている人間が脚本を作っているっぽい。マルクスの「疎外」は簡単に言うと、資本主義においては、仕事が分業されていて一人の労働者が担っているのはほんの一部だけだから楽しくないし、労働の成果は資本家のものになってしまい労働者の手には渡らないということ。

物語のはじめ、ニュージーズたちは新聞を売る仕事をしているだけで、新聞記事の内容に対しては、売り文句の題材くらいにしか思っていない。そんなニュージーズたちが、組合活動をしていく中で、新聞の1面記事を飾り、さらには自分たちで新聞を印刷するようにようになる。疎外からの解放じゃん。

この脚本すごすぎる。何故こんな作品をディズニーが作れるんだろうか?脚本家が運動の経験者なのか?調べたが分からなかった。情報求む。

 

作曲は安定のアラン・メンケンで、全曲キャッチーですごい。そして、群舞のシーンがものすごく多く、めちゃくちゃ楽しくて元気が出る。本当にずっと踊りっぱなし。若者のエネルギーがやばい。

 

See also:

JCSアリーナツアー版も社会運動の話だよね、ということで貼っておく。

iceisland.hatenablog.com

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