N2Nを見てきた。
こんなに人気になるとは全然思っておらず、抽選も全落ちして諦めかけていたが、親切にもお譲りくださった方がいて、なんとか行くことができた。ありがとうございます。
情報と感情が多すぎて頭がパンクしそうになった。以下物語の核心を思い切りネタバレしています。
基本情報
2022年4月10日（日）ソワレ＠シアタークリエ
キャスト
ダイアナ：安蘭けい
ゲイブ：海宝直人
ダン：岡田浩暉
ナタリー：昆夏美
ヘンリー：橋本良亮
Dr. マッデン/Dr. ファイン：新納慎也
感想
双極性障害の主人公ダイアナを中心として、夫ダン、娘ナタリーの家族3（+1）人の物語。
精神障害自体の描写は現実に即していない部分もあるのだが、治療の経過や患者を取り巻く家族の様子とかはびっくりするほどリアル。身内に精神障害を経験した人が何人かいるので、うわ、見たことあるやつだ・・・と思いながら見ていた。厳しい。
ダイアナは息子ゲイブを赤ちゃんのうちに亡くしたことがきっかけで、16年間双極性障害をわずらっており、成長したゲイブの幻覚が見えるという設定。幻覚が見えるというのは双極性障害の症状としては典型的じゃないはず。というか、双極性障害に限らず、こんなにハッキリとした幻覚が見える精神障害ってほぼないと思う。
全体的に、精神医学にだいぶ不信感を感じる描写が多かった。物語のテーマが"next to normal"だから、「治療」自体に否定的な立場なのかもしれない。
薬物療法は、いろいろな薬をとりあえず試してみて、薬の副作用でぼんやりしているのを「状態が安定」と言ったり。身内を見ていると確かにそんな感じだったけど。
電気けいれん療法の描写はさすがにちょっとなあと思った。電気けいれん療法を受けたダイアナが記憶を一切合切なくしてしまうというシーンがあるが、ほとんどないケースだと思う（劇中でも説明はされていたが）。ナタリーも非人道的な治療だと思っているような反応だったが、人権侵害に使われていた歴史はあるとはいえ、あんなに拒否感を持つものだろうか。
物語の結末としては、ダンがゲイブの死にちゃんと向き合えず、悲しみを夫婦で共有して乗り越えてこなかったことがダイアナの病の原因であり、共依存状態を解消するためにダイアナが家を出て行く。
パンフレットの岡田さんのコメントや、皆さんの感想を見ると、めちゃくちゃダンに厳しい。自分がダンに近い立場なのでダンを擁護してしまうのですが、精神障害に限らず家族のケアをしていると、”I am the one"（私がケアしてあげてるのに！）という気持ちになってしまうことはよくある。ダンが特別悪い夫というわけじゃなく、むしろダンは一人で仕事も子育てもダイアナのケアもほぼワンオペでやっていたと思われるわけで、比較的いい夫だと思う。そのせいで家族を「支える」ことが自分の存在意義になってしまい、共依存状態になってしまったのがまずかった。このあたりは、自分にも思い当たるところが大いにあり、厳しい気持ちになった。
「ゲイブ」は単に息子が成長した姿の幻覚というわけではなく、ゲイブが死んだという事実、さらには病そのものを現しているのかなと思った。鬱病の人が鬱状態のことを「黒い犬」と表現する言い方があるが、それと似ている。ダイアナを誘惑して死に導くシーンもあるのでトートみたいなものかもしれない。ダイアナ役の安蘭さんもこの前『蜘蛛女のキス』でトートみたいな役をやっていたので、親子でトートじゃんとなりちょっと可笑しかった。
とにかく”I’m alive”がかっこよすぎる。今回のセットだとブロードウェイ版と違ってポールダンスはないんだけど、背景の電球がビカビカに光るなかゴリゴリのロック曲にのって縦横無尽に動き回るのは強烈。JCSの”Superstar”みたいだ。かっこよすぎて全然治りたくない。
海宝ゲイブの”I’m alive”がPrime Musicで聞けることを発見して無限に聞いている。皆さんも聞いてください。
海宝さんと昆さんが出演ということでこちらのチームの公演にしたのだが、大正解。このお2人は本当に歌がうまくて声の圧がやばい。2重唱"Super boy and invisible girl"は聞いていてめちゃくちゃ気持ちよかった（内容は気持ちいい曲じゃないけど）。
ただ、キャスト6人の中で歌の実力差があって、せっかく海宝さん昆さんがうまいのに、他のキャストからちょっと浮いた感じになってしまっていたのが残念だった。
See also:
安蘭さんつながり。
海宝さんつながり。
