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観劇日記

【感想】『オペラ座の怪人』25周年記念コンサート版

アンドリュー・ロイド・ウェーバーが毎週無料で作品を公開してくれるシリーズ"The Shows Must Go On"の3週目は『オペラ座の怪人』だった。ジョセフ→JSCと来たから、発表順かと思って次はエビータかなと予想していたんだけど、違った。

 

 

実はですね、私『オペラ座の怪人』見たこと無かったんですよね・・・多分あんまり好きじゃないだろうなと思って・・・というわけで今回初めて見たのですが、やっぱりあんまり好きになれなかった。

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ファントム、モテない男性が振られて逆ギレしてるだけじゃない?いや、差別されて育ってるからなんだけど。やることがいちいち性格悪いよね。一番陰湿だと思ったのは、今までプリマ・ドンナだったカルロッタさんに黙役を割り振ったことや、声を蛙みたいに変えたところですね。自分が作曲した曲のキャストが思い通りにならないからって人殺すなよ。だから魂が醜いとか言われるんだよ。いや、ファントムにとっては音楽が全てだからなんだけど。

この作品が「切ないラブストーリー」という見せ方をされているのが納得いかない。ファントムにはALW自身が投影されていて、クリスティーヌは元奥さんのサラ・ブライトマンな訳だけど、この話のなかでクリスティーヌがファントムに惚れる要素なくない?歌を教えてくれただけじゃん・・・どちらかというと、クリスティーヌにとってはファントムは父親の代替と捉えられているように思えた。

クリスティーヌに歌を教えたり、曲を作ったりといった行為はそもそもファントム自身の欲求にもかかわらず、クリスティーヌに振られると、「あんなにしてあげたのに、裏切られた」になっちゃうんだよな。そもそも、クリスティーヌはそこまで音楽で成功したいと思ってないよね。自分の欲求と相手の気持ちが区別できていない。このへんの(非モテ男性の)心理描写はリアルだなと感じた。

あと、自分が引きこもり生活をしていると、ファントムがちゃんといつも燕尾服着ているの偉いなと思った。マスカレードはノリノリで仮装して登場したし、サルの人形からマスカレードの曲を流してるし、堂々と顔が隠れる服装できるから仮装好きなんだろうなと思った。(でも、普段の仮面より顔見えてますよ)

奇形で差別されてきた男性が美女に振られるけど同情されて救われるというストーリーは、「ノートルダムの鐘」と近いものがある。いや、カジモドとファントム性格が全然違うけど。というかファントム救われたんだろうか?

 

ラウルも登場当初は大概自分勝手な人に見えたけど、だんだん決め付けで動くのが減って、クリスティーヌの話を聞いてくれるようになって良かった。ラウルは「僕が守ってあげる」系の彼氏だが、最後はクリスティーヌがラウルを守る形になるのは良かった。2幕は「彼女がメンヘラDVの元彼と別れるために今彼が手を尽くしている様子」みたいで面白かった。

 

大道具や衣装はものすごい手がかかっていた。そもそも作品自体に、3回の劇中劇のシーンがあるので、普通の舞台の4倍くらいの衣装が必要になっている。しかもそれがパリのオペラ座での公演に見えるようにしないといけない。こんな豪華な演出を要請する作品を作るなんてさすが大御所だ。カルロッタさん役やピアンギさん役には声楽家が、ダンサーにはバレリーナが大勢必要とされる。

劇中劇のオペラはちゃんとオペラ音楽なのですごい。一個目の劇中劇「ハンニバル」はヴェルディらしきものを感じたのでイタリアオペラだと思うのですが、イタリア人のピアンギ氏が「イタリア語の"Roma"じゃなくて英語の"Rome"と発音して!」と直されるシーンがあり、謎だった・・・イタリア語公演じゃないの?ていうかここパリでしょ?

あと、ダンスの使い方がミュージカルよりもオペラ寄りだった。踊っているシーンでしかダンスがなく、感情を表すためのダンスが全くない。クリスティーヌやラウルがダンスするのは「マスカレード」だけ。ただしマスカレードのダンスはミュージカル的なダンスではあった。ファントムに至っては一回もダンスしない。

 

ファントムは気持ち悪いけど、もちろんラミンさんはカッコよかった。クリスティーヌ役のシエラ・ボーゲスさんもどんどん上手くなっていく様子が良かった。

 

Wikipediaで"Love Never Dies"のあらすじを読んだら解釈違い甚だしくて辛くなってしまった。登場人物全員クズと化してるじゃん・・・

マダム・ジリーなんて一番善人だと思ったのに・・・メグもね、本作では、クリスティーヌに全然嫉妬してないし、最後助けに来てくれるし、めっちゃいい子じゃん。それなのに、どうしてこうなった?

 

 

アンドリュー・ロイド・ウェーバーの配信の、他の作品の感想は下のリンクから見られます。

iceisland.hatenablog.com