絵のない絵本

観劇レポ、ミュージカルの話を書いています

【感想】ミュージカル『マリー・アントワネット』2021年

予習編で予告した通り、『マリー・アントワネット』見てきた。最近シアターオーブばかり行っている気がする。

私は共和主義者なので、途中まで「この反革命ミュージカルがああー」と思いながら見ていたが、2幕で勢いに飲まれてうっかり感動してしまいシマッタという感じだった。

 

基本情報

2021年2月21日(日)ソワレ @シアターオーブ

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キャスト

マリー・アントワネット笹本玲奈

マルグリット・アルノー昆夏美

ルイ16世:原田優一

フェルセン:甲斐翔真

オルレアン公:小野田龍之介

エベール:上山竜治

ランバル公妃:彩乃かなみ

ローズ・ベルタン:彩吹真央

レオナール:駒田一

 

あらすじ

ストーリーは、マリー・アントワネットと平民の女性マルグリットを主人公として、フランス革命の勃発からマリー・アントワネットの処刑までを描くというものだ。

マリー・アントワネット側の物語は特に目新しいものはない(ひどい)のでマルグリット側のストーリーだけ記載する。

 

路上生活をしているマルグリットは、マリー・アントワネットの舞踏会に忍び込み、民衆の窮乏を訴えるが、理解されず追い出され、失望する。その後、盗みで生計を立てているところを、詩人のエベールと出会う。エベールとマルグリットは、王位を狙うオルレアン公を出資者として、王妃のスキャンダルをパンフレットにして売り歩き成功を収める。

さらに、オルレアン公は首飾り事件を計画し、マルグリットはニセ王妃の役を務める。オルレアン公の狙いどおり、首飾り事件事件を通じて王妃の人気はさらに凋落する。

 

マルグリットは民衆に女だけでベルサイユに攻め込もうと呼びかけるがうまくいかない。そこにオルレアン公が現れ金を配ると、民衆たちは喜々としてベルサイユに進軍、国王一家をパリまで連行する。

監禁された王妃の見張り役として、マルグリットは王妃の部屋係を命じられる。マルグリットとマリー・アントワネットはぶつかり合いながらも交流を深める。さらに、同じ子守唄を知っていたことから、マルグリットが王妃の腹違いの姉妹(フランツ1世の私生児)であることが明らかになる。

マリー・アントワネットはフェルセン伯爵宛の手紙をマルグリットに預けるが、そこには外国勢力を使ってフランツ革命政府を倒す計画が書かれていた。

王妃の革命裁判で、王妃の反逆罪の証拠として、マルグリットは手紙に関して証言を求められるが、逡巡の末、マルグリットは証言を拒否したが、結局王妃は死刑判決となる。

王妃の処刑の日、倒れた王妃をマルグリットが助け起こす。王妃はマルグリットに礼を言い、処刑される。

エベールはマルグリットを王妃に同情し反逆罪の証拠を隠したと非難する。マルグリットは逆に、オルレアン公が王位を狙っていること、エベールがそれを知りながら共謀していたことを暴露する。これによりエベールとオルレアン公は失脚する。

 

感想

民衆が愚かに描かれすぎているし、この脚本だと、革命が起きたのは全部オルレアン公の陰謀のせいみたいに見える。

オルレアン公が王妃の中傷新聞を発行したりするだけで愚かな民衆が騙されて革命を起こしました、なんて、民衆と革命に対する侮辱でしかない。特に、ベルサイユ行進の際、オルレアン公が民衆に金を配って動員したというエピソードはひどい。ネット右翼の「左翼のデモは金で動員されている」というデマなみじゃないか。

民衆については、醜悪さと愚かさが執拗に描かれ、非常にグロテスクである。「自由・平等・博愛」というスローガンは「暴徒」が虐殺を行う際に使われ、皮肉に描かれている。革命家もエベールしか登場せず(終盤とつぜんロベスピエールやダントンが登場)、活動内容といえば王妃のスキャンダルを新聞にするだけ。その醜悪な革命側の中で、マルグリットだけが人権感覚に目覚めたように描かれていて違和感がある。

王妃の処刑の後、三色旗が舞台にババーンと出るわけだが、フランス革命をこんなに醜く描いちゃって、フランスに怒られないかな?(というか怒られろ)と心配になる。

 

おそらく、この話はマルグリットのビルデュングスロマンなんだろうと思った。

物語のはじめでは、権力者に陳情して世の中を変えてもらおう、という態度だったのが、自分たちで行動して世の中を変えよう、という意識に変化する。だんだん民衆にも失望してくるが、王妃との交流でヒューマニズムに目覚める(?)。最終的にはミソジニーを撒き散らすエベールや隠れ王党派のオルレアン公を失脚させ、「真の共和主義者」になってめでたしめでたし。...じゃないですよね、演出の意図としては。

とにかく昆さんマルグリットが非常にパワフルで終始圧倒され、目が離せなかった。ひねくれた受け答えとか、お行儀悪い歩き方とか、妙にリアリティがあり非常に良かった。

 

マルグリットが運動の場で体感する女性差別はなかなか痛烈に描かれている。マルグリットがジャコバン派の面々に女だから排除されそうになるだけでなく、女たちに行動を呼びかけて拒否される場面は、女たち自身が女性差別を内面化していることを示している。

当時、男性の活動家たちが女性の権利を非常に軽視していたのは事実だが、しかし、現実のヴェルサイユ行進では、数千人の女性たちは自分の意志で(決して貴族に買収されたのではなく!)決起した。その中には後に革命的共産主義者同盟女性協会を設立するフェミニストたちもいた。本作では、マルグリットを「持ち上げる」ために民衆を貶めているように思われる。

民衆たちが王妃の浮気を過剰に非難するのもミソジニーを描いているのかもしれないが(王の浮気なら非難されないだろう)、革命側ばかりミソジニーに染まっているかのように描かれていてフェアではない。

また、女だから恋愛感情や家族愛に対して同情する、という描写はどうかと思う。マルグリットが愛に餓えているというのも(原作を読むと)何かなあ。

最終的に、憎しみ合うのをやめて愛し合いましょうという陳腐なまとめで終わってしまったのも、エッ!?という感じだった。

 

どうも、フェルセンと王妃の恋愛をストーリーのメインに持ってきたせいで、フェルセンも王妃も、王妃が浮気しているから(そしてそれをオルレアン公がバラしたから)民衆に嫌われて革命が起きたと思っているみたいに見えてしまった。民衆の窮乏とか財政破綻とか特権階級への課税の話も出てきてはいるが、サラッと流されすぎている。ネッケルの罷免の話とか入れないと。

 

王は「私が鍛冶屋なら〜」王妃は「私達が普通の恋人なら〜」と言っているので、王族も身分制の犠牲者だと言いたいんだろうか。でも、王妃は王権神授説を信じているし、マルグリットが指摘しているように「(マルグリットよりも)自分が上だと思っている」んですよね。

人間として人格をわかり合う前に、そういった無意識にまで及んだ分断があり、ぶつかり合うことでその分断を超えてわずかに交流するというのは良かった。昆さんマルグリットも笹本さんマリーもパワフルで迫力があり、このシーンはさすがに感動してしまった。子守唄のくだりとか血縁関係設定とかはなくてもいいとさえ思う。

 

オルレアン公は、役柄としては、王党派で民衆をバカにしやがるカス野郎だが、曲はカッコいいし小野田さんの歌は上手いしでムカついた。

ルイ16世役の駒田一さん歌上手くて良かった。ルイ16世の描写はちょっとアホっぽすぎて気の毒だけど...

今回の演出では、貴族の嫌なところや愚かなところはコミックリリーフのローズ・ベルタンやレオナールにだいぶ押し付けていて、ちょっとなあという感じ。この人たち貴族じゃないし。ヴァレンヌ逃亡の失敗もレオナールのせいですか?

ランバル公妃は史実ではポリニャック伯夫人やエリザベート内親王がいたはずの部分まで進出し大出世、良かったね(?)なぜかタンプル塔から一人だけ抜け出し(貴方も囚人では?)一瞬で虐殺されるという...

 

舞台演出は照明がロマンチックで、衣装の豪華さも相まってテーマパークみたいな感じでよかった。舞台の回転も効果的に使ってるなと思った。しかし、渋谷のビルでこんなキラキラした舞台を見ているプチブル連中が、「街に目を向ければ地獄、何で気づかないの?」という歌を聞いているのは批評性がある。

音楽はいつものリーヴァイ節だから特に言うことはなし。『エリザベート』の「ミルク」の曲が聞こえた気がしたけど、セルフパロディですかね?

 

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遠藤周作の原作小説の感想。

【感想】遠藤周作『王妃マリー・アントワネット』 - 絵のない絵本

 

「民衆の歌」の革命歌・運動歌としての受容 - 絵のない絵本

【感想】遠藤周作『王妃マリー・アントワネット』

今度ミュージカル『マリー・アントワネット』を見に行くので、予習として、原作である小説『王妃マリー・アントワネット』を読んだ。遠藤周作による1979年の小説である。

筆者はミュージカル版は初演・再演ともに未見だが、いちおうストーリーは調べたので知っているつもり。

 

王妃マリーアントワネット(上) (新潮文庫)

王妃マリーアントワネット(上) (新潮文庫)

 
王妃マリーアントワネット(下) (新潮文庫)

王妃マリーアントワネット(下) (新潮文庫)

 

 

3人の主人公

フランス革命を実在・非実在の人々の群像劇として描いている。その中でも、3つの身分を代表する3人の女性がメインキャラクターとなっている。

 

マリー・アントワネット

本作のタイトルロールであり、彼女がフランスに嫁いでから処刑されるまでを描いている。

若いころはワガママで愚かだが、革命で辛酸を舐めて少しずつ人間的に成長していく。よくあるマリーアントワネット像で、特に目新しい点はない。

 

マルグリット・アルノー

ミュージカル版ではもう一人の主人公(MA)になっている平民の女性。自分の貧しく悲惨な境遇から、マリー・アントワネットをはじめとした王族・貴族を憎んでおり、復習を望んでいる。革命がはじまってからは、虐殺に喜びを見出すようになる。

マリーアントワネットに外見的に似ているという点がしばしば言及され(ミュージカルと違って血縁関係は示唆されていない)、首飾り事件ではニセ王妃の役を演じる。史実の首飾り事件でニセ王妃となった女性ニコル・オリバから着想を得たキャラクターだと思われる。

 

イボンヌ・アニエス

マリーアントワネットが第二身分(貴族)の主人公、マルグリットが第三身分(平民)の主人公だとすると、第一身分(聖職者)の主人公にあたるのがアニエス修道女である。クリスチャンである遠藤周作の考えに最も近い存在だと思われる。

修道女だが革命の理想に共感し、修道院を出奔して女工となる。しかし、革命が勃発すると民衆の暴力に疑問を持つようになる。ついに山岳派(過激派)の指導者マラーを殺害してしまい、マリーアントワネットのいるコンシェルジェリー牢獄に収容された後、処刑される。

史実でマラーを暗殺した女性シャルロット・コルデーをモデルにしていると思われる。

 

信仰と革命

クリスチャンの立場から社会の不平等に疑問を持ち、それを正そうとするアニエスの態度は、作者の考えと一致していると思われる。

たいてい、革命と教会は対立するものだという印象がある。たしかに、フランス革命のなかで、教会権力はアンシャン・レジームの一部として批判された。さらに、共和制成立の後は、ロベスピエールらは無神論者で、キリスト教を弾圧し、非キリスト教化を推し進めた。

しかし、フランス革命の初期段階では、聖職者でありながら革命を支持する者も活躍していた。小説中にも、アニエスがシエイエスの著書『第三身分とは何か』を読むシーンが登場するが、シエイエスは聖職者であったが第三身分代表の議員として選出され、国民議会を設立した人物だ。実際、下位の聖職者には平民出身者が多く、改革賛成派も多かったらしい。そのため、三部会では第一身分の一部が第三身分に合流し、国民議会を設立した。

現代では、キリスト教信仰と革新思想を結合させた思想として、解放の神学がある。運動の源流であるフランス革命の初期にも、信仰と革命の結合がみられることは、今まで意識していなかった。今後調べると面白そう。

 

ミュージカルへ

ミュージカル版のマルグリットは、小説版のマルグリットとアニエスを合体させたキャラクターである。

平民で過酷な環境で育ったという点は小説版のマルグリットを引き継いでいるが、革命精神への共鳴、民衆の暴力への疑問、獄中のマリー・アントワネットとの交流といった精神的な要素はほとんどアニエス由来である。

小説版のマルグリットは革命の暴力的な側面を感覚的に肯定しており、マリー・アントワネットに同情したりはしない。当時の民衆としてはリアリティがあると思うが、これだと観客は共感しづらいと思われ、理性的に革命に共感するアニエスの内面が採用されたのだろう。

また、ミュージカル版のマルグリットは革命指導者だが、小説版では革命を主導する立場にあるのはアニエスである。舞台で王妃と対峙するには、立場的にもそれなりにする必要があったと思われる。

 

女性の描写

本作では3人の女性主人公たちは皆かなり愚かに描かれている。しかもそれを女性であることに紐付けた表現が散見され、だいぶミソジニック。

また、セックスシーンはないものの、性に関する話題もかなりの頻度で挿入される。マルグリットがマリーアントワネットを鞭打ちすることを想像して興奮するシーンなど、かなり陳腐な感じがある。出版された当時は女性主人公の物語にはセックスの描写が必須だったのだろうか。

 

ミュージカル版では、マルグリットが女性であるために革命勢力の中でも排除されるシーンがあり、批判的に描いている。日本におけるフランス革命ものの元祖の『ベルサイユのばら』は、男装して自分の思想に殉じる女性を描いており、当時としては非常に革新的だったが、政治運動は男性の特権だったことを無批判に描いていた点は現代からみると不満があった。その点、ミュージカル版『マリー・アントワネット』は、女性の描き方の点でかなりアップデートされていると思う。

近年、マリー・アントワネットの周囲の女性を題材に、フェミニズムの立場から描くフィクションが流行っている印象がある。小説の『マリーアントワネットの日記』『ベルサイユのゆり』シリーズ、漫画の『傾国の仕立て屋 ローズ・ベルタン』など。

革命側対王政側という構図の外から、社会における女性の立場や生活について捕らえなおそうという機運が高まっているのだろうか?個人的には、フランス革命当時に既に女性の権利宣言を行って「反革命」として処刑されたオランプ・ド・グージュを描いた作品を読んでみたいなと思う。

 

References

「ミュージカルの変異と生存戦略――『マリー・アントワネット』の興行史をめぐって――」田中 里奈、演劇学論集 日本演劇学会紀要71 巻 (2020年) 

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjstr/71/0/71_1/_article/-char/ja/

「ミュージカル『マリー・アントワネット』における分身の役割」松尾ひかり、文学研究論集第50号(2019年)

https://core.ac.uk/download/pdf/195800907.pdf

 

 

 

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【感想】ミュージカル『新テニスの王子様 The First Stage』

『新テニミュ』を見に行ってきた。漫画『テニスの王子様』の続編である『新テニスの王子様』をミュージカル化した作品である。

「新」テニミュということで、今までのテニミュから音楽的に進化していて、驚いた舞台だった。

 

基本情報 

2021年2月7日(日)ソワレ@日本青年館ホール

キャスト

入江奏多相葉裕樹

他は省略

 

ストーリー

ストーリーとしては、『テニスの王子様』の登場人物である中学生テニスプレーヤーたちが、高校生の日本代表合宿に参加するという話だ。中学生たちは、ペアを組んで試合をし、負けた方は合宿から追い出されてしまう。

勝った方の中学生たちは、高校生たちに混じって練習するなかで頭角を現す。実力者の鬼先輩(鬼のような先輩ではなく、鬼という苗字の先輩)に率いられて、高校生チームと試合をし、勝利する。負けた方の中学生たちは、追い出されると思いきや、大自然の中で三船コーチにスパルタ教育を受け、一回り強くなって帰還する。

 

感想

キャスティング・ストーリーについて

まず、キャストに実力のある役者さんが大量に投入されていてびっくりした。前評判は聞いていたけど、予想以上だった。

今までのテニミュでは、基本的にはキャラクターは中学生だけで、それを演じる役者さんたちも新人かそれに近い人たちだった。今回は、高校生役・コーチ役に、既にミュージカル俳優としてキャリアを積んでいる俳優さんが多くキャスティングされていて、非常にレベルアップしていた。

特に、三船コーチ役の岸祐二さんは桁違いに上手かった。東宝レミゼでアンジョルラスやジャベールを演じたこともある方らしい。なんとなく三船コーチのシーンだけ曲がレミゼ風で、「さあお聞き下さい」みたいな雰囲気だった。三船コーチは革命起こし役なので、ジャベールよりはアンジョルラス(見た目以外)。

他のコーチ役、高校生役もレベルが高かったが、個人的には鬼先輩役の岡本悠紀さんが良かった。歌もダンスもキレがあるし、演技も芸達者だった。鬼先輩の役は、歌舞伎で見得を切るみたいな動きがダンスに入っていたり、土蜘蛛の糸みたいなやつを投げたり、演出が凝っていて、優遇されている。

また、出番が多い役に歌がうまい役者さんを割り振るように、キャスティングの基準が変わったのかと思う。

 

三船コーチと鬼先輩が、見た目のインパクトのみならず、歌もうまいし、曲がたくさんあるしで、かなり目立っていた。そのため、テニミュって美少年たちじゃなくて、おじさん(とおじさんみたいな人)を見るものなんだっけ?となった。ストーリー的にも、勝ち組中学生は鬼先輩に率いられ、負け組中学生は三船コーチに率いられ、で同じく顔の怖いおじさんに中学生ズが率いられる構図になってしまっていたのも、しつこさがある。これは原作のせいだからいかんともしがたいが・・・同じ展開になっているのを逆手に取った演出にしたら良かったと思う。

逆に、主人公のはずの中学生たちの印象がイマイチ薄くなってしまっていた。唯一出番が多かったのは跡部様で、演じている高橋怜也さんは新人なのに歌が上手いなあと思ったら歌手さんらしい。跡部王国の背景に城が出るのはFrozenのパロディなんだろうか。

私は赤也くん役の前田隆太郎さんが好きで見に行ったはずなのだが、あまり歌うシーンがなく(白石との二重唱は良かったが)、残念。歌も上手い役者さんだと思うのだが・・・

 

原作からして、『新テニ』は『テニプリ』よりもギャグ感のつよい作品なのだが、周りの観客があまり笑ってなくて困惑した。

「桃城の手首を完全に粉砕」したり、ガットが2本しかなかったり、試合相手を3回も磔にして「テニスに逆転ホームランはねえ!」と怒られたり(しかも結局KO負け)、5個のボールを同時に打って鷲を撃退したり(何のこっちゃ)、絶対笑うところだろ!と思うのに、みんな笑ってない。何でだ。慣れたんだろうか。

しかも次回は、ネットを炎上(物理)させたり、ダブルスで裏切ったり、試合中に海賊に刺されたりするわけでしょ?笑うでしょ、絶対。

 

音楽について

作曲家は、今までの佐橋俊彦さんから兼松衆さんという方に代わったそうだ。曲が非常にオシャレでキラキラになっていた。また、シーンによる曲調の使い分けが上手かったし、三船コーチのシーンはレミゼ風の曲だったりして遊び心が感じられた。個人的には、テニスの試合シーンの曲が、毎試合違っていたのが、芸が細かくて好きだ(今まで全試合同じだったよね?)。

話の構成上、学校単位ではなく、各キャラクター単位で話が進行するようになった。そのため、ソロ曲や二重唱が多くなり、合唱・群舞が少なくなって、寂しい。私はミュージカルの合唱が好きだが、2.5次元舞台はたいてい群衆が登場しなくて、合唱も少ない。唯一それを埋めてくれるのが、学校単位の合唱シーンだったのに・・・さらに、原作の熱心な読者というわけではないので、学校単位でなくキャラ単位で認識するには、キャラが多すぎて厳しい。

また、今までの曲はシンプルだったが、今回はソロ曲も二重唱もかなり歌うのが難しそうな曲が多かった。重唱でハモる部分がいくつかあったけど、難しすぎる気がする。

 

作詞家も、三ツ矢雄二さんから変わったんじゃないかと思うが、情報が見つけられない。(教えてください)

今までの歌詞は、ミュージカルの歌詞としては人称が不自然だと思っていたが(歌い手と歌詞の視点が異なっていた)、それが解消され、自然になったと思った。しかし、いかんせんあまり歌詞が聞き取れなかったので、定かではない。日本青年館ホールの音響がイマイチなせいなのか、役者さんたちがフェイスシールドをしているせいなのか分からないが・・・

 

音楽的には非常にレベルアップしていて、2.5次元舞台だから芸術的にはイマイチという印象を払拭したいのかなと感じた。キャストのギャラがチケット代金に跳ね返ってきているような気がするけど、気にしない。

一方、シンプルイズベストな大道具に照明を工夫してテニスの試合を表現する形式は変わっていなくて安心した。この手作り感はなくしてほしくない。

 

追記

音量が大きすぎて結構苦痛だった。改善してほしい。

初演のため、曲の予習、復習が出来ないのは残念。曲を耳に慣れさせてから舞台に臨みたいタイプなので。公演の前に曲を公開しませんか?

 

See also:

これまでのテニミュ感想。だんだん好きになっている・・・

iceisland.hatenablog.com

はじめてテニミュを見た回。

iceisland.hatenablog.com

【布教用】パク・ウンテ(박은태)さん出演ミュージカルまとめ

たびたび言及しているけど、韓国のミュージカル俳優であるパク・ウンテ(박은태)さんが好きだ。といっても、おととし(2019年)にハマったニワカなのですが・・・

過去の作品も全部見たい!という欲求を少しでも満たすべく、今までに出演された作品をまとめてみた。

韓国語が分からないので、間違っていたらご指摘いただきたい。

 

 パク・ウンテさん出演作一覧

ライオン・キング

2005年

アンサンブル

 

ウンテさんのデビュー作はライオンキングだそうだ。さすがに動画は見つけられなかった。サイの足の役とかやっていたそうです。想像できない・・・


ノートルダム・ド・パリ

2007~2009年

グランゴワール役

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 同名のミュージカルは二つあるけど、これはフランス発の方。(劇団四季でやっているのはディズニーの『ノートルダムの鐘』)

ウンテさんが演じたのは、狂言廻しである吟遊詩人のグランゴワール。初めてのキャストとしては、大きな役柄なんじゃないだろうか。劇団四季ぽいメイクをしたウンテさんが新鮮。

 

『愛は雨に乗って(サ・ビ・タ~雨が運んだ愛~)』

2007年、2009年

ドンヒョン役

 

韓国オリジナルミュージカルで、日本でも何回か公演されているようだ。

この作品、登場人物は3人だけだそう。兄弟の絆を描いたもので、ウンテさんが演じたのは弟のほう。

大作もいいけど、こういうシンプルな舞台のウンテさんも見てみたいですね。

 

ハムレット

2008年 レアティーズ役、2011年 ハムレット

 

韓国で公演された『ハムレット』は何種類もあるらしく、どれだかよく分からず・・・ 2008年版と2011年版はおそらく違うものだと思う。

 

モーツァルト!』

2010年、2011年、2012年、2014年、2020年

ヴォルフガング・アマデウスモーツァルト

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ウンテさんの出世作となった作品だそうだ。10年間、100公演以上も出演されているとのこと。

去年(2020年)配信で観劇した。他のキャストさん(ジュンスさん、パク・ガンヒョンさん)の分も見ましたが、やはりウンテさんのヴォルフガングが一番好きです。

iceisland.hatenablog.com

 

『ピマッコル恋歌』

2010年、2011年

キムセン役

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韓国オリジナルの、朝鮮王朝時代を舞台とした作品。 「ピマッコル」というのはソウルにある裏路地の名前だそうだ。

当時の公演レポを読むと、日本語字幕がついていたそうだ。このころからずっとパクウンテさんを見ている方々、すごいし羨ましいな~。

 

『蜘蛛女のキス』

2011年

モリーナ役

 

原作はアルゼンチンの同名小説で、 映画にもなっているそうだ。トランスジェンダー女性のモリーナと、社会主義活動家の青年ヴァレンティンが刑務所で出会い・・・というお話らしい。面白そうなお話なので、映画を見てみようかな。

ウンテさんが2020年に『キンキー・ブーツ』のローラ役をやったとき、意外だと思ったけれども、過去にもトランスジェンダー女性の役はやっていたんですね。

 

エリザベート

2012年、2013年

ルイジ・ルキーニ役

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ウンテさんのルキーニ、根はいい人そう。愚かな民衆を扇動してやるぜじゃなくて、本当に民衆のこと思ってそう。(あまりアナキストっぽくはない・・・)

ウンテさんはもう『エリザベート』には出演してくれないのだろうか。韓国ではトートは若い俳優さんの登竜門的扱いだから、難しいかな。いつかフランツ・ヨーゼフ役?

 

『皇太子ルドルフ(ルドルフ~ザ・ラスト・キス~)』

2012年、2013年

ルドルフ役

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フランク・ワイルドホーン作曲の二匹目の泥鰌を狙った作品・・・  

 

ジーザス・クライスト=スーパースター』

2013年、2015年

ジーザス役

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 とにかく見て!まじで。

JCSは本当に一番好きな作品で、いろいろなバージョンを見たけれども、ジーザス役の理想の一つなんじゃないかと思う。歌が上手くて高音が出るのはもちろんだけれど、葛藤の表現がすごい(語彙力なし)。

筆者は韓国語が分からないのでインタビューとかも読めないし、ウンテさんの内面について何も知らないけれども、ジーザスみたいな人なんじゃないかと勝手に思っている。

 

フランケンシュタイン

2014年、2018年

アンリ・デュプレ/怪物役

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韓国オリジナルミュージカルで、何回か日本公演もされている。

メアリ・シェリーの原作から話がかなり変わっているらしい。ウンテさんが演じるアンリは、主人公であるフランケンシュタイン博士の親友だが、無実の罪で処刑されてしまう。フランケンシュタインはアンリを生き返らせようとするが、出来たのはアンリの記憶をなくした「怪物」だった・・・というお話。

善人が途中から悪人に変わる役柄は、次の『ジキル&ハイド』に通じるものがある。

今後もウンテさんが演じてくれる予感がするので、機会があったらぜひ見たい作品。

 

『ジキル&ハイド』

2014年~2015年、2016年、2018~2019年

ヘンリー・ジキル/ハイド役

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フランク・ワイルドホーン作曲のブロードウェイミュージカル。韓国ではすごく人気がある演目だそうだ。

筆者を沼に落とした作品。善良なジキル博士からハイド氏への変化はウンテさんの表現力大爆発。

予習なしでいきなりこれを生で見てやばかったときの感想、このときはまだハマったことに気づいてない・・・

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『ドリアン・グレイ』

2016年

ヘンリー・ウォットン役

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 オスカー・ワイルドの小説が原作で、韓国でオリジナルミュージカル化した作品。

ウンテさんが演じるヘンリーは、美青年ドリアンを唆して悪に導く役。ジュンスさんドリアンとウンテさんヘンリーの競演、見たかった。

 

『ファントム』

2017年、2021年

ファントム役

 

アンドリュー・ロイド・ウェーバーの『オペラ座の怪人』ではない方。どう違うのかは、よく知らない・・・

今の時点で、ウンテさんの次回作なわけですが、当然コロナなので見に行くことはできない。配信期待してます!!!

 

マディソン郡の橋

2017年、2018年

ロバート・キンケイド役

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アメリカの小説を原作にしたブロードウェイ作品。農場で暮らす主婦フランチェスカと、カメラマンのロバートの、4日間だけのラブストーリーを描いている。

同じ小説をもとにした映画は、アカデミー賞を受賞していて、ロバート役はクリント・イーストウッドが演じているとのこと。

韓国ミュージカルで、サスペンスなしの純粋にロマンチックなラブストーリーって珍しいですね。

 

ベン・ハー

2017年、2019年

ユダ・ベン・ハー

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これも、アメリカの小説を原作にした作品で、韓国のオリジナルミュージカル。映画は有名なので、さすがに私でも知っている(見たことはないけど・・・)

ウンテさんが演じた主人公のベン・ハーは、イエスと同時代のイスラエルの青年。自分や家族を陥れた友人に復讐を遂げるが、心は晴れない。十字架に架けられるイエスと出会い、奇跡を目の当たりにすることで、信仰を知る・・・というお話らしい。

ジーザス・クライスト・スーパースター』に続き、十字架を担いで歩くウンテさん。本当に、こういう正義や倫理に思い悩む役柄がすごく上手い。

 

ドクトル・ジバゴ

2018年

ユーリィ・ジバゴ役

youtu.be

ソ連の同名小説を基にした、韓国オリジナルミュージカル。

お話の舞台は革命期だそうで、確かに背景にデモっぽいシーンが。反革命ということでソ連では出版禁止だったらしい。ソ連の話だと知らなかった・・・

 

スウィーニー・トッド

2019年

スウィーニー・トッド

 

ティム・バートン監督の映画にもなった、ソンドハイム作曲のブロードウェイミュージカル。主人公は妻を奪われた理髪師のトッド氏で、腹いせに人を殺しまくり、パイにして売りまくるという話(いいえ)。

実は、このとき韓国まで見に行ったのだけど、パク・ウンテさん回でなくホン・グァンホさん回を見たのでした。ホン・グァンホさんのトッド氏はわりとガチの狂気、若干のクズ感もあり怖かった。

ウンテさんトッド氏はどんな感じだったんだろうか。動画がなくてわからないけど、たぶん心の奥底では良い人みたいな感じだったんじゃないかと想像。今思えばウンテさん回も見ればよかった・・・

iceisland.hatenablog.com

 

『キンキーブーツ』

2020年

ローラ役

youtu.be

シリアスな役柄が多かったウンテさんが『キンキーブーツ』のローラ役ということで、話題になった作品。

 

『ジェントルマンズガイド(紳士のための愛と殺人の手引き)』

2020~2021年

モンティ・ナバロ役

 

これもトニー賞受賞のブロードウェイ作品。

貧乏な青年モンティが、爵位の継承権を得るために次々に人を殺すというコメディ。

コメディだけど、ちゃんと内面の葛藤も描かれていて良かった。『ジキル&ハイド』や『キンキーブーツ』のネタも仕込んでくれていて嬉しい。

iceisland.hatenablog.com

 

参考

박은태 - 위키백과, 우리 모두의 백과사전

パクウンテさんプロフィール | パク ウンテ ジャパンファンサイト(박은태)

 

【感想】ミュージカル・ゴシック『ポーの一族』2021年(配信)

梅田芸術劇場で上演されている『ポーの一族』のライブ配信を見た。

原作はもちろん萩尾望都先生の名作漫画『ポーの一族』。

このミュージカルは、2018年に宝塚で上演された作品だそうだ。今回は、宝塚を退団された主演の明日海りおさんは続投、他の役は男性キャストも交えて再演されたということだ。

 

キャラクターや全体の雰囲気は、原作漫画とは少し違う印象だったが、これはこれで素敵だった。また、複雑かつ繊細な原作をミュージカルらしくまとめなおしていて、新しい発見もあり、良い二次創作になっていると思う。また、宝塚特有のダンスや合唱の豪華さも、宝塚を見たことのない筆者には新鮮でよかった。

 

 

基本情報

2021年1月23日(土)マチネ

キャスト

エドガー:明日海りお

アラン:千葉雄大

リーベル綺咲愛里

シーラ:夢咲ねね

ポーツネル男爵:小西遼生

老ハンナ/ブラヴァツキー夫人:涼風真世

大老ポー/オルコット大佐:福井晶一

クリフォード:中村橋之助

ジェイン:能條愛未

レイチェル(アランの母):純矢ちとせ

 

感想 

構成のこと

原作は、一話完結のエピソードが断続的に発表されていて、その時系列も前後している。そのため、時系列を整理して把握するのは結構たいへんであるが、それも作品の一要素でもある(永遠の時を生きる人たちにとっては、時間は直線ではなく、行ったり来たりするものなのかもしれない)。

本作では、原作終盤の「ランプトンは語る」に登場する現代人ドン・マーシャルとマルグリッド・ヘッセンを案内人として、時系列を追ってエドガーの足跡を辿っていくというふうに再構成されている。

 

採用されているエピソードは、以下4つ。分量にすると原作の半分くらいか。

・「メリーベルと銀のばら」:エドガーとメリーベルの生い立ちとバンパネラになった経緯を描く

・「グレンスミスの日記」(の前半):貴族の青年がスコッティの村に迷い込んでエドガーとメリーベルに出会う

・「ポーの一族」:メリーベルとポーツネル男爵夫妻の消滅と、アランの加入

・「ランプトンは語る」(の冒頭):現代の人々がエドガーたちの足跡を辿る

 

1幕は、「メリーベルと銀のばら」と「グレンスミスの日記」と、「ポーの一族」の途中盤まで、2幕では「ポーの一族」の中盤~最後までと「ランプトンは語る」という構成。

1幕は、かなり特急で進行した印象。「メリーベルと銀のばら」の後半のオズワルドとユーシスのくだりなど、重要なエピソードが地の文だけで飛ばされてしまった。ユーシスなんかほぼナレ死・・・。カットすれば良かったのでは?一方、2幕は、独自のエピソードを挿入しながらのゆっくり進行だった。そのため、構成のバランスは悪い印象だった。

2幕で挿入されていたオリジナル要素である交霊術のくだりは、原作の「ホームズの帽子」のエピソードをもとにしていると思うが、必要性がよく分からず、無駄に尺を使っている印象が否めなかった。時代に合わせて、実在人物であるブラヴァツキー夫人とオルコット大佐に変更されている。一人二役を演じる涼風真世さんのブラヴァツキー夫人の怪演は良かったが・・・

 

現代の人々を狂言回しとして、エドガーたちの足跡を追うという構成にしたことで、時系列も分かりやすいし、エドガーを眼差す人間たちの視点を入れられたのは良かったと思う。原作の半分くらいは、エドガーたちに遭遇した(そして、人生が少し変わってしまった)人間たちの視点から描かれたエピソードだ。ミュージカルという形態ではそれを再現するのは困難だが、狂言回しを登場させることで、その雰囲気を一部再現できているのは、良い演出だったと思う。折角だから、狂言回したちにももう少し歌わせてあげてほしかったが・・・

 

本作では、「永遠の生を共に生きるパートナー探しの物語」という切り口でまとめ直していて、歌詞もそれにフィーチャーしたものになっていた。それを念頭に原作を読み返してみると、ああ、そういう話だったのか、という納得感があった。よい二次創作だと思う。

その点からいうと、ポーツネル男爵夫妻は塵になる最期の時まで一緒にいられたので理想のカップルなのだ、というのも新発見だった。このカップルは好きなキャラクターなので、素敵に描かれているのは嬉しい。消滅シーンも原作よりドラマティックに演出されていた。

ただし、ミュージカルという形式で、エドガーたちが自分の思いの丈を歌い上げるのには少し違和感があった。エドガーたちはそういう素直なキャラじゃなくてもっと捻くれていると思う。それに、萩尾望都先生の漫画では、登場人物の感情は、微妙かつ繊細にチラッと垣間見えるものなので。そのため、本作はもともとあまりミュージカル向きではない題材を扱った労作かもしれない。

 

キャスティングのこと

宝塚で生まれた演目に、男性キャストを混ぜるという試みは良いと思った。宝塚の動画を見ていると、壮年以上の男性や女性を、若い女性だけが演じるのはやっぱりちょっと無理がありそうだ。その点、本作ではポーツネル男爵役の小西遼生さんはシブくて素敵だった。大老ポー役の福井晶一さんも、なかなか大老っぽさが出ていた(どうでもいいけど、イスラーム学者の中田考に見えた)。

また、宝塚では毎年何作もの新作ミュージカルが上演されていて、そのうち再演されレパートリーとなる演目はわずかでもったいないことだ。せっかくの日本オリジナルのミュージカルなのだから、宝塚では事情があって再演できなくても、他の劇団で活用できれば良いと思う。宝塚を退団した女優さんは多いのだし、上演権を柔軟に運用してもらって、演目の様々な演出を楽しめるようになるといいと思う。

 

明日海りおさんのエドガーは、堂々としていてカッコいいのだが、原作のどこか儚げな少年エドガーという感じとは少し違うなという印象だった。明日海さんがトートをやっている動画を見たがめちゃくちゃカッコいいので、単にイメージの問題だと思う。

演出の小池修一郎氏が文庫版の解説で書いているとおり、「男役の二枚目スターは背が高いのである。少年には大きすぎるのだ。」。この解説は1998年に書かれたものだが、この点は結局未解決のまま上演されたのだなと感じた。まだ、小柄なカワイイ系の男役はいないのだろうか?演目が宝塚を離れたのだから、少年らしさを追及したキャスティングも今後はアリだと思う。

 

キャストごとに「作画」がバラバラなのも気になった。明日海りおさんのエドガーはお化粧バッチリの宝塚風で異界の存在の雰囲気満点、一方、千葉雄一さんのアランはお化粧なしの普通の少年で、どうしても釣り合っていない感じだった。アランは、素朴さを失っていないといえどもエドガーのパートナーなので、「作画」は合わせてあげてほしかった・・・

2018年の宝塚公演の映像を見たが、このときの柚香光さん演じるアランは、見た目も萩尾望都世界の少年っぽくて素敵だし、演技も繊細で素晴らしい。(↓これ!)

youtu.be

 

個人的に異彩を放っていたのは、涼風真世さん演じる老ハンナ。カッコよさすぎ、美しすぎるので、全然「老」じゃないじゃん・・・と思ってみていたが、調べてみたら御年60歳らしい。本物のバンパネラではないだろうか?クリフォード役の中村橋之助さんも55歳らしく、信じられない。宝塚や歌舞伎の世界にはバンパネラが隠れているのかもしれない。

ジェイン役の能條愛未さんは、落ち着いていて素敵だなと思ったら、元乃木坂の方らしく、アイドル出身に対する偏見を反省した。

 

演出のこと

驚いたのは、とても贅沢にダンスが盛りまれていること。ほとんど全てのシーンにバックダンサーがいるし、その種類も多様で非常に豪華。学生のダンスはアイドル風?で遊び心を感じた。多くの団員に出番が必要な宝塚特有なんだろうけど、嬉しい点だった。

合唱のシーンも多く、合唱大好きパーソンとしては嬉しい。民衆がバンパネラを狩るぞの曲なんか好きだ(ちょっとノリノリすぎる気もするが。民衆は恐怖にかられているのであって・・・)。しかし、全体的には曲はあまりキャッチーではなくメリハリに欠けている感じがあり、また、歌詞もあまり洗練されていない印象であった。

 

「ミュージカル・ゴシック」と名乗るだけあって、ゴス風の衣装や舞台装置には気合が入っていた。アンサンブルやダンサーの人数も多いし、衣装のコストが凄そう。萩尾望都先生は服飾史マニアらしいので、衣装にこだわるのは仕方がない。

1幕の最後、エドガーの人生の走馬灯みたいな感じで舞台がぐるぐる回るシーンの演出は非常に好きだった。

演出に若干ワンパターン感が感じられたのは残念だった。例えば、場転のあと、男の人がピョーンと飛び跳ねるシーンから場面が始まる、という部分が3回くらいあった。舞踏会のシーンも数回あったし、学生のダンスも、2回あって似たような感じだった。

 

参考文献

萩尾望都ポーの一族』1~3 小学館文庫

萩尾望都 ポーの一族年表:萩尾望都作品目録

 

See also:

iceisland.hatenablog.com

【感想】ミュージカル『ジェントルマンズガイド』2021年ソウル公演(配信)

韓国で上演されている『ジェントルマンズガイド』(A Gentleman's Guide to Love and Murder、紳士のための愛と殺人の手引き)のライブ配信を見た。

大好きなパク・ウンテさんが主演の回(はあと)!

字幕はなかったけど、パク・ウンテさんのさすがの歌唱力と演技力で、すごく楽しめた。

 

 

基本情報

2021年1月17日(日)ソワレ

キャスト

モンティ:パク・ウンテ

ダイスクィズ:チェ・ジェリム

シベラ:キム・ジウ

フィービー:ソヌ

 

2014年にトニー賞を受賞した作品。相続・恋愛・殺人という古典的なテーマを扱っている。ブロードウェイ作品のはずなのに、ストーリーもジョークも何となくイギリス的だなと思ったら、20世紀始めのイギリスの小説が原作らしい。

日本では2017年に一度だけ上演されたそうな。知らなかった。

 

あらすじ

母を亡くし悲嘆にくれている青年モンティのもとに、母の古い友人ミス・シングルが訪れる。なんと、母は大貴族ダイスクィス家の生まれで、モンティにも爵位の継承権があるという。母は、モンティの父と結婚したせいで勘当され、貧乏な暮らしを余儀なくされていたのだ。

モンティは恋人シベラに継承権の話をするが、取り合ってもらえず、逆にシベラは貧乏なモンティに愛想をつかして金持ちと結婚するという。一念発起したモンティは、自分より継承権の高い8人を抹殺して伯爵になることを決意。塔から突き落としたり、蜂に刺させたり、危険地帯に送り込んだりして、現在の伯爵以外の7人を次々に始末することに成功。また、その途中で親戚の女性フィービー(継承権はモンティより後)と知り合い、婚約する。

最後に現在の伯爵を殺そうとするが、モンティが殺すより前に、なぜか伯爵は毒を飲んで死んでしまった。晴れて伯爵になったモンティだが、伯爵の殺人容疑で収監されてしまう。死を覚悟し、牢の中で回想録を書いていると、看守もダイスクイス家の血を引いていると聞き、意気投合。

シベラとフィービーの努力によって釈放されたモンティ。実は、伯爵に毒を盛ったのは、昔ダイスクイス家で使用人をしていたミス・シングルだった。謎も解け、爵位も2人の女性も手に入れ、めでたしめでたし(?)

 

感想

演目について

大筋のテーマ(相続、恋愛、殺人)はオペレッタっぽい。地声じゃなく裏声で歌っていたり、台詞の部分でも裏でオケが演奏していたり、音楽的にもオペラ寄りっぽい。原作も20世紀前半なので、おそらくサヴォイ・オペラとかそのあたり?への原点回帰を志向した作品なんじゃないかと思った(完全に適当に書いている。詳しい人に教えてほしい。)。

 

台詞の多いミュージカルで、私は韓国語が分からないので、ジョークはあまり分からなかったが、唯一、モンティの苗字「ナヴァロ」を頑なに「ニグロ」と発音するという最悪のジョークは分かった(だよね?)

あと、インドやアフリカのステレオタイプな描写(人食い部族!)とか、ダンベルで首チョンパとか、ブラックジョークがひどすぎる。いや、殺人をコメディにする時点でブラックジョークなのか・・・イギリスっぽすぎる(これもステレオタイプ?)・・・

あと、冒頭で観客に警告したり、ご先祖が話しかけてきたりの演出も何となくイギリスっぽい。なぜか分からないけど・・・だいたい、「モンティ」という名前がモンティ・パイソンみたいだし。

 

キャストについて

モンティ役のウンテさんは当たり前だけど流石の表現力で、はじめは純朴な貧乏青年のモンティが途中からワルカッコいい金持ち野郎になってくる様子、どこを取っても素敵(はあと)だった。特に、1幕最後めっちゃカッコよかったけど、どこかで見たような・・・と思ったら『ジキル&ハイド』だね(左手わきわき)。あと、この前まで出演していた『キンキーブーツ』のローラネタもやってくれてた。

 

ダイスクイス家の人間全員(モンティとフィービー以外)の8役?9役?を同じ役者が演じるというすごい演出。このミュージカル最大の見所かもしれない。早着替えも大変。今回演じていたのは、チェ・ジェリムさん。去年『アイーダ』でラダメスをやってた方ですが、カッコいいラダメスとはうってかわって、変なおじさんたちや変なおばさんたちを演じていた。

アンサンブルの方々も8人だけで回しているのでフル出演、こちらも地味に早着替えが大変そう。

 

コメディのくせして曲は超むずかしくて、特に女声に高音がやたらに多い。これを歌いこなすシベラ役のキム・ジウさんやフィービー役のソヌさん、アンサンブルの女声陣はすごい。ソヌさんは地声が低いからなのか、ちょっと高音が不安定なところがあったけど、3重唱や4重唱のところはハモりがすごすぎて、聞いててポカーンとしてしまった・・・

フィービーが出てきてからは、シベラとフィービーが対比される演出が多く、衣装もシベラは赤、フィービーが青で分かりやすい。最後、シベラとフィービーが互いを罵りあうフリをして実は共謀しているというのは結構気持ちのいい回収の仕方だと思った。

 

演出のこと

背景はほとんど全部モニターだった。去年シアターオーブで『アナスタシア』を見たとき、今回と同様に背景がモニターで、映像が非常に綺麗なのに驚いた。今回も、背景をモニターにすることで、スマートな背景の切り替わり方とか素敵な演出ができていたのだが、いかんせん録画なのでモアレが出てしまい結構見づらかった。配信だと、役者さんの表情が見やすいのはいいが、こういうデメリットがあるのは予想外だった。

カメラワークは、さすがに配信用に撮影しているので臨場感があった。たまに煽りを入れてくれるのが、役者さんがカッコよく見えるのでナイスだった。

 

See also:

パク・ウンテさん関連はこちら。

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2020年の観劇を振り返る

年の瀬なので、今年見た舞台を振り返って行こうと思います。

見返してみると、結構いろいろ見てました。韓国遠征も行ったし、東宝も四季もテニミュも歌舞伎も行ったし、配信でオペラやバレエも見たし。

いつの間に、(コロナがなければ)月イチで観劇できる身分になっていたのだろうか。

 

1月

ソウルに遠征に行きました。あれからまだ1年も経ってないのか・・・

見た演目は、以下の4つ。3泊4日で4公演はさすがに多いので次は(いつ?)どうにかしたい。

ミュージカル『ファンレター』

韓国オリジナルの作品。めっちゃ良かった。配信で知った方も、ぜひいつか生で見てほしい。

日本語字幕が非常に素敵な言葉選びで、字幕をつけた方にはこれからもミュージカルシーンで活躍してほしいと思う。

ミュージカル『スウィーニー・トッド』

ホン・グァンホさん主演で見られて良かったという気持ちと、パク・ウンテさんの回も見たかったという気持ちが半々・・・

ミュージカル『レベッカ』

スウィーニー・トッド』もだけど、韓国ではサスペンス系のミュージカルが人気ですね。演出が素敵だった。

ミュージカル『アイーダ』

予習不足で見て後悔している・・・劇団四季で次にやったら見てみたい。

 

2月

ミュージカル『テニスの王子様』3rdシーズン 全国立海 後編

来年は新テニミュを見に行くので楽しみ。

 ・二月大歌舞伎

歌舞伎は当日席で見られるというのを知った回。これからも気軽に来たいなと思った矢先のコロナで、実行できていない・・・

 

3月

ミュージカル『アナスタシア』@シアターオーブ

私はギリギリ見ることができたけど、この後公演中止になってしまいましたね・・・

今思い返すと、今年日本で見た作品で一番楽しめた演目は『アナスタシア』だったかもなあ。B席で見たけど、もっと良い席取れば良かったなあ。

 

3月~9月

軒並み公演中止となり、配信だけだった。

5月くらいまでは、在宅勤務で残業もなかったから、ずっと家で配信を見られた。配信で安くいろいろな作品に触れられたのは良かった。

6月以降、欧米のオペラやバレエの配信はまだ続いていたけど、自分が出勤するようになったために、配信を追うことが難しくなってしまった。

 

ミュージカル

The Shows Must Go On!

アンドリュー・ロイド・ウェーバーのミュージカル作品の配信プロジェクト。ほとんど全部見た。今まで食わず嫌いしていた『キャッツ』とかを好きになることができて良かった。お世話になりました。これからも続けてください。

ミュージカル『モーツァルト!』韓国版

配信だからこその全キャストコンプリートができた。やっぱりパク・ウンテさんは最高に歌がうまくて演技もうまくて顔も良いと再確認できましたね。来年の帝劇の『モーツァルト!』も見たい。

ミュージカル『ファンレター』

1月にソウルで見たのとは違うキャストで見られて良かった。

 

オペラいろいろ

オペラって話の進み方が遅いので、劇場でなく配信で見るのは結構きついよね・・・

オペラ『トゥーランドット』新国立劇場

演出がすごいとツイッターで話題になっていた作品。演出だけで話が全く変わっていたので驚いた。

スーパーオペラ『紅天女』藤原歌劇団

漫画『ガラスの仮面』の劇中劇のオペラ化。再現度は高いけど、ちょっと長すぎて退屈だったかな・・・

 

バレエいろいろ

今見返すと、何も分からんなりに、いくつか見ていた。

ボリショイバレエの『スパルタクス』はすごかったなあ。また海外に行けるようになったら生で見に行きたいなあ。

 

11月

ミュージカル『キャッツ』劇団四季

本当はこの日、『スクールオブロック』を見るはずだったんだよお。最前列のセンブロだったんだよお。中止になってしまった。悲しい。

 

12月

ミュージカル『プロデューサーズ』@シアターオーブ

悪名高い福田雄一演出を体感できた。来年の『スパマロット』は行くか迷う・・・

実は、初めて井上芳雄を生で見て、流石に歌もダンスもめっちゃ良かった。