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観劇日記

『デスノート The Musical』ロシア語版の謎

YouTubeを見ていたら変わった動画を見つけた。ミュージカル『デスノート』をロシア語で歌っている動画。

韓国版は知っているけど、ロシアで上演されたことなんてあるの?となり、調べてみた。

youtu.be

 

デスノート The Musical』の海外展開

デスノート The Musical』はもちろん漫画の『DEATH NOTE』を原作にしたミュージカル。ただし、テニミュなどの「2.5次元」ミュージカルとは違い、海外への輸出を念頭において制作された作品である。プロダクションは、2.5次元ミュージカルを専門に手がける制作会社ではなく、ホリプロ・ステージが手掛けている。

制作陣を海外から招聘するという気合の入りよう。作曲は、『ジキル&ハイド』などのブロードウェイミュージカルを手がけているフランク・ワイルドホーン。ワイルドホーン氏は、近年、宝塚の演目に曲を提供したり、宝塚女優だった和央ようかさんと結婚するなど、日本との関係が深くなっている。脚本は、ワイルドホーンと共に『ボニー&クライド』を手がけたアイヴァン・メンチェル。演出は日本の演出家の第一人者といっていい栗山民也。

 

まず、英語で脚本と歌詞が制作され、2014年に英語のデモアルバムがリリースされた。英語版上演の計画もあったらしいが、今のところ実現していない。

初演は2015年4月に東京の日生劇場で行われた。その後、時を置かずして、同年7月には韓国のプロダクションによるソウル公演が行われた。当初から、日本・韓国の二カ国で展開する計画だったことが分かる。特に韓国版キャストは超豪華で、ライト役はウェストエンドでも活動していたホン・グァンホさん、L役が東方神気のキム・ジュンスさん。

日本版、韓国版ともに、漫画が連載終了して久しいにも関わらず、再演もされている。日本版は2017年に再演され、このときは台湾公演も行われた(私もこのときに見た)。2020年にも再々演予定だったが、コロナのために中止になってしまった。韓国版も2017年に再演されている。

 

ロシア語版

で、ロシア語版って聞いたこと無いけど、何なんだ?

調べてみると、なんとWikipediaロシア語版には、漫画の『デスノート』の記事から独立して、ミュージカル『デスノート』の記事がある!ちなみに、英語、韓国語、ロシア語、ポーランド語、フィンランド語にもある。しかし日本語版にはない。何でだ。

Тетрадь смерти (мюзикл) — Википедия

「2017年にロシアで上演する計画がある」と書いてあるが、その後どうなったのかは記載なし。

 

さらに調べてみると、以下のサイトに、ロシアでの上演について記載があった。

Death Note: The Musical | Death Note Wiki | Fandom

2017~2018年にかけて、コミコン・ロシアのほか、モスクワやサンクトペテルブルクでコンサート形式で上演が行われたと書いてある。冒頭の動画はコミコン・ロシアでのステージだったのだな。主催は、Pentagram LTDという、オリジナルミュージカルやコンサートの上演をしている団体のようだ。

ПЦ "Пентаграмма"

YouTubeを探してみると、冒頭のコミコンの動画のほかにも、ライブハウスらしきところで歌っている映像も出てきた。『デスノート』の曲以外もやっているので、ミュージカルコンサート的なイベントなんだろうか。

月役のアレクサンドル・カジミンさんはロシアでは有名なミュージカル俳優さんのようで、今度『チェス』にも出演するようだ。L役のヤロスラフ・バヤルナスさんも若いけどなかなかうまい。

www.youtube.com

 

そんなことを調べている間に、ちょうど、今年4月にモスクワでコンサート形式の上演をするというニュースが入ってきた。

 
 
 
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アイヴァン・メンチェルのインスタには、「日本の同僚との長きに渡る交渉、多くの困難を経て、ついに上演が決定した」とある。なんか、すごく、権利関係でなんらかのトラブルがあったことを想像させる文章なんですけど・・・

というか、今までのコミコンのステージとかでは、許可を取らずにやっていたんだろうか・・・それで、正式にライセンスを取ろうとしたら揉めてしまったのでは?あくまで推測ですが。ホリプロから何のアナウンスもなく、日本語圏で一切話題になっていないのも、怪しい。アナウンスありました

 

2020~2021年は「日露地域・姉妹都市交流年」だそうで、その一環の上演ということになっているらしい。日露交流のみならず汎ユーラシア的ミュージカル文化創出のためにがんばってほしい。