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観劇日記

【感想】『ロケットマン』2019年

ロケットマン』がAmazon Primeに入っていたので見た。

エルトン・ジョンの半生を描いたミュージカル映画エルトン・ジョンについてはミュージカル『アイーダ』と『ライオンキング』しか知らない状態で見たが、この映画はミュージカルに携わる前の時代を描いている。

しかし、精神的に辛いシーンが続く映画だった。エルトン・ジョンは幼少期、息子に関心のない両親に育てられ、愛情に飢えていた。成功してからも作詞家のバーニーにはフラれるし、マネージャーの彼氏には利用されて暴力を振るわれ、ゲイなのを隠して結婚した女性ともうまくいかない。孤独感を埋めるために、アルコールやドラックの依存症になってしまう。とにかくエルトンがひどい事をされたり言われたりするシーンが多くてやりきれない。

エルトン・ジョンのライブシーンがたくさんあるのだが、エルトンが珍妙な衣装で派手なパフォーマンスをしたり、セレブな生活をするのは、本来の自分を覆い隠すためなので、素直に盛り上がることができない。曲調と登場人物の気持ちが一致していないのは、あまり舞台のミュージカルにはないので、珍しい演出だなと思った。

ライブのシーンも全て、エルトンを演じているタロン・エガートンがやっているらしく、歌もうまいし独特の表情とかすごい。

 

最終的には、エルトンは依存症の治療施設で治療を受けて回復し、ハッピーエンドとなる。自分自身と自分の音楽を認めることができるようになるのだが、しかし、いままでエルトンにひどい事をしてきた両親や元彼と和解することはないし、ずっと支えてくれたバーニーと付き合えるというわけでもない。

並の脚本だと、依存症から回復した後、夫と出合って愛し合ってハッピーエンドとなりそうなところだ。しかし、本作では、パートナーと出会えたのは、物語が終わったあとのエピローグでのことだ。あまりカタルシス感はないが、現実的で正しい演出だと思った。