絵のない絵本

観劇レポ、ミュージカルの話を書いています

【感想】『シュミガドーン!』2021年

『シュミガドーン!』(Schmigadoon!)を見た。Apple TVという配信サービスのオリジナルドラマ。30分×6話しかないので、気軽に見られる。

黄金期(1940~50年代)のミュージカルのパロディがたくさんあるコメディドラマだが、その時代のミュージカルに詳しくない自分でも楽しめる、キュートな作品だった。

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あらすじ

医師のメリッサとジョシュはつきあって数年のカップル。倦怠期を乗り越えるため、関係改善プログラムのキャンプに参加するが、山の中で迷子になり「シュミガドーン」という町に迷い込んでしまう。シュミガドーンは、黄金期のミュージカルの世界だった。住人たちは、突然歌って踊りだすだけでなく、価値観も1940~50年代の超保守的。現代のリベラルなカップルであるメリッサとジョシュはウンザリ。しかしシュミガドーンから出るには「真実の愛」を見つける必要があるという。

メリッサとジョシュは、別れてそれぞれ「真実の愛」を探すことに。2人はシュミガドーンで暮らすうちに、未婚の母やゲイなど古い価値観の中で抑圧されている人たちを助け、保守的だった住民たちも変えていく。それと同時に、自分たちも変われることを実感する2人。互いへの愛を確認して仲直りし、ハッピーエンド。

 

感想

個人的な好みとしては、クラシックなミュージカルは価値観が合わないのであまり得意じゃないが、この作品では保守的な価値観も含めてネタにされており、現代人のメリッサやジョシュがツッコミを入れてくれるので楽しく見られた。男性のジョシュが医者なのは喜ばれるのにメリッサは女性なので嫌がられるとか、差別がちゃんと描かれているので安心。ジョシュもうっかり女性(とのデート)を買うオークションに参加してしまったりはするが、手を出そうとした相手が未成年だと知って慌てるなど、最低限、現代人としての常識はある(現代のアメリカの作品だから当然?)。

とはいえ、メリッサが性的同意にやたらにこだわるなど、リベラル過ぎ(?)なのも多少ネタにされていて、バランス感覚が良くて感心した。

 

プロットは、現代人が異世界転生(?)して現代の価値観で無双(?)するという王道。悪役も最後には改心するハッピーエンドで、キャラクターみんなに対する愛が感じられるストーリーなのが嬉しい。はじめはミュージカル世界の住民でしかなかったシュミガドーンの人々が、話が進むにつれてキュートになってくる。ゲイカップルの2人のラブシーンが特に好き。ゲイのキャラクターがLet It Goするシーンなんて見飽きたような気もするが、この作品だと世界が想像を絶する保守なので逆に新鮮。

 

ミュージカルのお約束(観客に状況説明してくれる子供とか、運転中に歌っても大丈夫とか)をめちゃくちゃネタにしているが、どれも愛がある。メリッサはミュージカル好きだがジョシュは嫌いというのもバランスがとれている。

元ネタの作品は、『オクラホマ!』『回転木馬』『サウンド・オブ・ミュージック』『王様と私』などなど。私はこのあたりの作品をあまり見てないのであんまり分からなかったが、性教育版「ドレミの歌」とか、あからさますぎるやつはさすがに分かった。あと、作中でメリッサが解説もしてくれるので親切。

基本的には元ネタと似たような曲調だが、ラストシーンや市長がLet It Goするシーンでは、現代的な曲になっているのも芸が細かくて好きだ。

↓の比較動画が分かりやすい。比較すると『オクラホマ!』も本当にそのまんまだな・・・

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人種に関するネタも面白い。作中でメリッサが指摘しているように、シュミガドーンの住人の人種は多様であり、明らかに異人種のカップルもたくさんいる。それなのに、「異人種間の結婚」が非難されるシーンがある。ということは、設定上は白人で、カラーブラインドキャスティングされているということだ・・・メタすぎる。

あと、「多宗教」バザーなのに、長老派とメソジスト派しかいないとかも地味に好き。

 

ミュージカル部分のクオリティはすごく高い。曲は皆キャッチーで、パロディを抜きにしても楽しい。古風な衣装や背景もレトロでかわいい。

役者さんも当然ミュージカルで活躍している方々。ウィキッドのグリンダ役のクリスティン・チェノウェス、レミゼ映画版アンジョルラス役のアーロン・トヴェイト、アベニューQのクリスマス・イブ役のアン・ハラダなどなど。

6話という短いシリーズだからこのクオリティで作れたんじゃないかと思うけど、第2シーズンの噂もあるらしく、楽しみ。