RED & BLACK

観劇日記

全てがどうでも良くなる怪作|『ロッキー・ホラー・ショー』1975年

今度『ロッキー・ホラー・ショー』のミュージカルを見に行くので(無事に開催されれば、の話だが・・・)、予習として映画版The Rocky Horror Picture Showを見た。

プロットは意味不明で特に後半は困惑したが、音楽はキャッチーでノれる曲が多いし、次々に繰り出されるギャグも好みで、総合的にはとても楽しい映画だった。舞台を見に行くのがすごく楽しみになった。

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舞台の『ロッキー・ホラー・ショー』は1973年にロンドンで初演。この映画版は2年後にアメリカで製作された。

とても有名なカルトムービーだが、なんとなく今まで履修せずに来てしまった。

この作品の存在は、中学生のときに大槻ケンヂの小説『グミ・チョコレート・パイン』を読んで知っていた。主人公がサブカルおたく少年で、マニアックなロックバンドを組んだりしていて、カルト映画好きのクラスメイトの美少女と一緒に深夜のレイトショーに行くみたいなストーリーだったと思う。『ロッキー・ホラー・ショー』も紹介されていて、映画館で米を投げるなんて、変な文化があるもんだなあと思ったのを覚えている。今は応援上映も4DXもあるし、時代は変わったね。

冒頭の"Science Fiction/Double Feature"は、そんな70年代サブカルシーンのエッセンスがモリモリになっている曲で、歌詞に出てくる映画の元ネタはあんまり分からないけどニヤニヤしてしまう。こういうジャンル愛がマニアにウケて、カルトムービーとして長く愛されるようになったのだろうな。

 

私も中高生のときはサブカル少女的なところがあり、夢野久作とか読んでいたが、都会じゃないのでシネコンしかないし、今みたいに子供でもネットで色んな映画を見られるという時代でもなかった。大学生になってからはB級映画にちょっと挑戦してみたりもしたけど、純粋に面白くない(笑)。だから、カルト映画は履修してこなかった。

そんな私でも『ロッキー・ホラー・ショー』は楽しく見ることができた。映画の作りとしては、たぶんわざとB級映画っぽく作っていて、映像も荒いし、プロットは後半完全崩壊してしまう。しかし、テンポが良く、変なキャラがどんどん出てくるしクスッと笑えるシーンが次々にあって飽きない。イギリスっぽく皮肉が利いたギャグが多いのも好みだ。犯罪学者氏のシーンはモンティ・パイソンを思わせる。

 

そして、とにかく曲が楽しくノリが良く、踊っているうちに全てがどうでも良くなってしまう。音楽に疎いので、何が優れているのかは上手く説明できないのだが・・・

単に私がロックミュージカルが好きなのもある。改めてロックミュージカルというジャンルの歴史を調べなおしてみると、60年代後半の『ヘアー』が元祖で、71年の『ジーザス・クライスト・スーパースター』が続き、73年にこの『ロッキー・ホラー・ショー』が生まれる。ジャンルの黎明期に既にこんな怪作が生まれているとは、驚いた。むしろ黎明期だからこそ生まれたのかもしれないが・・・

 

なんといっても、城に住むキャラたちが皆キュートなキャラクターで好きだ。

特に、執事のリフ・ラフはめちゃくちゃハマリ役だ、と思ったら脚本・作曲のリチャード・オブライエン本人だった。見た目と歌い方が絶妙!このリフ・ラフを見た後に、舞台版の映像をいくつか見てみたけど、どのバージョンを見てもちょっと物足りない。今度舞台版を見たときにも、たぶん「何か違うな」と思ってしまうだろうな。今から謝っておこう・・・すみません。

ダメ男のロックンローラーのエディも好き。登場して一曲歌っただけで、ゴアグラインドメタルのジャケット写真みたいになってしまうのは笑った。マジェンタ&コロンビアの女子コンビもかわいい。

そして、主人公?のフランク。うーん、このキャラ付けはどうなんだろう?少なくとも、今、トランスジェンダーのキャラクターをこんなふうに描いたらアウトだけど、当時としてはトランスが主人公というだけで先進的だったから、いいのかな。衣装にもゲイプライドのピンク・トライアングルがついているし。でも、フランクが異星人で、しかも最後には無残に殺されてしまうというのは、やはり寂しい展開だなと思った。

 

See also:

ミュージカル版も見たよ!楽しい。

iceisland.hatenablog.com