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観劇日記

【感想】"Love Never Dies" メルボルン公演版(配信)

ちょっと遅くなりましたが、無料配信されていたLove Never Diesの感想です。

 

先週の『オペラ座の怪人』に続いて、Love Never Diesも初見だった。あらすじなど調べて、世間で「解釈違いの塊」だの「いっそLoveが死んでいたほうが良かった」だの、さんざんに言われているのを見て、心の準備をして臨んだ。

でも、いざ見てみると、「アレッ?『オペラ座の怪人』よりも、こっちの方が好きかも?」という感じだった。

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あらすじを読んで、前作では善人に見えた人たちが皆クズになってしまったのではないかと思って恐れていたのだけど、そうではなくて誰も悪くない話だった。メグがとにかくかわいそう。自分が売れなくても頑張ってきたところに、若いうちにお金持ちと結婚して仕事辞めた友達が来て、社長にも世間にもチヤホヤされてたら辛い。その友達を殺しちゃうし。誰もメグを責めないでほしい・・・

 

個人的には、ファントムとクリスティーヌがセックスしてたという点が、一番の前作との齟齬ポイントだった。だって前作のクリスティーヌはあんまりファントムのこと好きそうじゃなかったもん・・・それなのにラウルとの結婚式の前夜にセックスしてたと言う設定でびっくり。しかも朝起きたらファントムはいなかったとは、それはファントムが悪い。結婚式に乗り込んでクリスティーヌを連れて逃走するやつをやるべきだった。

 

前作のファントムは才能はあるのに人に愛されなくて辛いというキャラクターだったけど、本作ではジリー母娘には愛されているし、才能も認められているしで、自分の居場所を見つけて安定したのだなと思った。ラストのメグの自殺を止めるシーンでは、お前にそんなコミュニケーション能力あったのかと思って意外だった。しかし、自分の思い通りにならないとすぐ人を脅す癖(癖ってレベルじゃないぞ)は直っていないのでイカン。

ファントムが、グスタフの父親が自分だというのは秘密にすると約束したのに、次のシーンでもうラウルに対してそう仄めかしたのは笑っちゃった。確かに直接言ったわけじゃないけどね。よっぽど子供がいるのが嬉しかったんだな。

ファントムがグスタフと感性が同じだ!ってなるシーンでは、仲間を見つけたサブカルオタクみたいで可愛かった。自分の音楽を認めてもらうことや感性を分かってもらうことと、自分自身を受け入れてもらうことと未分化なところが、非モテオタクで悲しい。ファントムが作ったテーマパーク「ファンタズマ」は名前から分かるように、ファントムの趣味全開の空間で、ティム・バートン映画みたいな感じ。物語の舞台である19世紀終盤は、「ドラキュラ」などのゴシックロマンス小説が書かれた時代でもあるし、理解者はいたはずとも思うけど。というか、ゴシック小説である原作をゴシックたらしめている張本人であるファントムさんが意識的にゴシック趣味をしているのって何か不思議な感じがする。しかし、音楽の才能は遺伝するのかもしれないけど、趣味は遺伝しないんじゃないか?

 

ラウルはダメ夫と化してしまっているが、不思議と憎めない感じだった。でもクリスティーからしたら、夫が借金こしらえたので働こうとしたら、働いたら浮気ってことにさせられるってどういうことよという感じだし、見捨ててやろうかなと思うのも無理はないと思う。まあ、ラウルからしてみれば、妻には浮気されるし、息子もそいつとの子供らしいし、駆けつけてみれば妻は間男の腕の中で死んでるしで、もうどうしたらいいか分からんよね。かわいそうかも。

 

音楽的には『オペラ座の怪人』よりさらにロック寄りな感じ。ちょっとだけ前作のテーマが入ってたりしたけど、もうちょっと組み込んだ方がファンは喜ぶだろうになーと思った。売れた前作に安易に頼らないのが、巨匠の拘りなのかしら。

 

 

アンドリュー・ロイド・ウェーバーの配信の、他の作品の感想は下のリンクから見られます。

iceisland.hatenablog.com