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観劇日記

【感想】『リョーマ! The Prince of Tennis 新生劇場版テニスの王子様』2021年

リョーマ!』を見てきた。漫画の『テニスの王子様』が原作のミュージカルアニメ映画である。

筆者はテニプリの大ファンというわけではないが一応原作漫画は読んだし、テニミュも数回見たことがある。

変な映画だとネットで話題になっていたので見に行ったが、たしかに変な映画だった。

 

あらすじ

原作の『テニスの王子様』と続編の『新テニスの王子様』の間にあった出来事を描いたオリジナルストーリー。

アメリカで旅行中の主人公のリョーマとヒロインの桜乃(さくの)は、魔法のテニスボール(?)のせいでタイムスリップしてしまう。プロのテニスプレーヤーだったリョーマの父・南次郎の現役最後の試合が行われようとしているところだった。

現役時代の父のプレイを見たいと望むリョーマだが、なぜかマフィアに追われることになってしまう。マフィアは、南次郎の家族を誘拐して脅迫することで、試合に負けさせようと企んでいるのだった・・・

 

感想

演出が独特で、とにかく画面内の情報量が多い。歌って踊るのはミュージカルだから当然だが、テニスの試合もしているし、同時に2箇所の場面が映っていたり、心象風景の演出で謎のキラキラやその場にいないはずのテニス仲間たちが召還されたりする。正直、脳のメモリ不足になってしまい覚えていない部分も多いが、面白いのは確かだ。面白さの方向性がおかしい気もするが(褒めています)。

カメラワークも結構謎で、やたらに顔のドアップをしたかと思えば群舞のシーンで上から撮ってみたりと、普通の(CGではない)ミュージカル映画ではやらないだろうカメラワークがかなりあった。CG自体のクオリティもちょっと変で、遠近感がおかしい部分が結構あった。

あと、CGのキャラクターがダンスしててもあんまりカッコよくないということを再認識させられた。YouTubeに作中のダンスを再現した動画が上がっていたが、同じダンスでも人間がやった方が断然カッコいいもん。

作詞作曲を漫画原作者が担当しているのは珍しい。特にミュージカルっぽい曲ではないが、以前から存在しているキャラソンをアレンジした曲もあったみたいで、作品のファンの人には嬉しいんでしょう。

 

ストーリーは単純で正直そんなに面白くはない。まあ、アニメの映画用オリジナルストーリーだからこんなもんかもしれないが・・・

テニプリの登場人物のほとんどは男の子なので、本作は女性の出番が多いのは珍しいところ。しかし、桜乃は典型的な守られるヒロインでそんなに魅力的ではないし、オリジナルキャラクターのエメラルドさんは強いマフィアでありテニスプレイヤーでもあるカッコイイ女性なのに、結局イエ制度とルッキズムに回収されてしまうので残念。

舞台がアメリカなのでアメリカ人のキャラクターが数人登場するが、あまりにもステレオタイプな描写で、これも良くないと思う。原作でも関西や沖縄出身のキャラクターのステレオタイプはすごいが・・・原作連載は20年も前だから仕方がないと思えるが、新作でもこの調子ではさすがに駄目だろう。

 

独特のCGに単調なストーリー、ってなんか見覚えがあるなと思ったら映画版『キャッツ』だ。それに、本作はやたらに猫が活躍するのも『キャッツ』を想起させる(キャッツのオープニングみたいなシーンもある)。

もともと、テニミュは『キャッツ』に似ているというのが私の持論なのだが、それが強化された気がする。どちらも、作品の世界が観客に歩み寄ってくることがない。キャッツの猫の世界の掟に人間は従うしかない。同様に、テニプリ世界の法則も一般の世界とはかけ離れており、テニスが全てに優先されるし、森羅万象の原因と結果が全部テニスであるという奇怪なものだが、観客はそれを受け入れるしかない。

本作も、テニスボールでタイムスリップし、マフィアとテニスで勝負するというかなり無茶苦茶なストーリーなので、テニプリ世界の異世界ぶりはかなり体験できる。強烈な映像表現も異世界に浸るためだと思えば納得できる。変な映画だと聞いたから見に行ったわけだし・・・そういう意味では目的は十二分に達成できた。

 

See also:

『キャッツ』映画版の感想。

iceisland.hatenablog.com

テニミュの感想。

iceisland.hatenablog.com