『キンキーブーツ』見てきました。
劇場でも見たことがなく、去年やっていた松竹ブロードウェイシネマも見逃していたので、完全に初キンキーブーツでした。
基本情報
2022年10月8日（土）ソワレ＠シアターオーブ
キャスト
チャーリー・プライス：小池徹平
ローラ：城田優
ローレン：ソニン
二コラ：玉置成実
ドン：勝矢
ジョージ：ひのあらた
パット：飯野めぐみ
トリッシュ：多岐川装子
感想
なんといっても、衣装が素敵だった！ドラァグクイーンのお姉さんたち（エンジェルズ）の衣装はどのシーンもとても可愛くてカッコいいし、工場労働者の衣装も一般人らしくリアルでよかった。
田舎のふつうの工場労働者たちが、ドラァグクイーンたちと交流することで開放されていく様子が素晴らしい。
1幕ラストの”Everybody say yeah"は、工場にエンジェルズが登場して労働者と一緒に楽しく踊る曲。ベルトコンベアの上で踊るのがすごく楽しそう。実際にやったら危ないけど。工場という資本主義が労働者の身体を縛り付ける場所が祝祭空間に変えられて、資本主義の秩序が破壊されたような感じがして嬉しかった。
ラストシーンの"Raise You Up"では、工場労働者たちもキンキーブーツを履いて踊り、開放された雰囲気でとても楽しい。工場労働者のお兄さんの一人が、すごくゲイっぽい服装になっていて、クローゼットのゲイだった人がカミングアウトしたのかな、と思った。エンジェルズの衣装もこのシーンが一番キラキラピカピカで一番好きだった。
しかし、無償労働を美談にするような描写が多いのはよろしくないと思った。
2幕では、資金難を救うために労働者たちが給与返上で働く（しかも長時間労働）という展開があり、はあ？と思ってしまった。完全にやりがい搾取ですが・・・「みんな仕事の他にも生活がある」といって残業を断った労働者のお姉さんの台詞（うろ覚えですが）が完全に正しい。どうしてこうなった？
また、ローラがエンジェルズをモデルに起用しようと提案する場面でも、エンジェルズならプロのモデルと違ってギャラが必要ないと言っていて、これもよろしくないと思った。ローラによれば、エンジェルズは本物のランウェイを歩くことができれば報酬はいらないらしい。若手やフリーランスのアーティストに「経験になるから」と言って無償労働させることが問題となっているが、それと同じじゃんと思ってしまった。
他にもストーリーはちょっと納得しがたい展開が結構多かった。
結局、ホモソーシャルの物語だなーと感じてしまった。チャーリーとローラが分かり合ったのは、父親の期待に応えられなかった息子という共通点のおかげだし。ローラがダンに認められたのも、ボクシングという「男らしい」強さの結果だし。
"What a Woman Wants"は女性目線の曲で面白いのだが、「女性がパートナーに求めているのは伝統的な男らしさではない」という内容で、結局「女を（性的に）獲得するには」という視点からは離れられていないなあと感じてしまった。
ラストでローラを「真の男だ」と称える（？）展開もよく分からなかった。ローラのセクシャリティがよく分からないけど、ローラはそれで嬉しいんだろうか？
チャーリーが二コラと別れてローレンとくっつく展開もあまり好きじゃなかった。自分のやりたいことが見つからない間はぐいぐい引っ張ってくれる二コラと付き合っていて、やりたいことが見つかったら別れるって、都合良すぎるだろと思ってしまった。ソニンさん演じるローレンはとてもチャーミングだけどね・・・エアーコンプレッサーを自分にプシューとやるやつはやってみたくなった（駄目）。
全体的にすごくチャーリーに甘いストーリーだと思った。主人公だから仕方ないのか。
前方サイドブロックの席だったのだが、音響はかなり悪かった。歌詞が英語のままの部分が多いせいもあると思うけど、歌詞や台詞はほぼ聞き取れず。せっかくの生オケがスピーカーからの音にかき消されて全く聞こえず、1幕の間生オケの存在に気付かなかったほど。そのせいか、ストーリーにもあまり入り込めなかったし、シンディ・ローパー作曲の楽しいはずの曲もじゅうぶん盛り上がれず、とてももったいなかった。
というわけで、キャストの皆さんの歌もよかったと思うのだが、あまり堪能できなかった・・・
See also:
キラキラ・ピカピカ・クィアクィアが楽しいつながりで。クィアに囲まれる小池徹平さんつながりでもある。
『蜘蛛女のキス』のモリーナも「男になれ」と言われるシーンあったな・・・こちらは、批判的に描かれているので良かったけど。
